鉄と日本刀

日本刀はイメージほど切れない。
それは日本刀が大したことがないのではない。
技術そのものは古いものなのだから仕方がない。
木炭と刀鍛冶の伝統の技では現在の工学に裏付けられた学問と巨大設備とコンピュータと比較にならないのは仕方がない。
鉄は固まるときの温度で硬いが決まる。
柔らかいとパーライトで針金とかピアノ線などに使われる。
マルテンサイトは硬いもので刃物に使われる。
硬いものは脆いのでバランスが重要となる。
かつてタイタニックが沈んだり北米周りの第二次大戦の米輸送船が破損したのは温度変化で鉄の強度が変わってしまったのが原因。
溶接技術がなく、ひび割れが続いてしまう。当時はまだリベットでボルトでつなぎあわせる古い技術の方が信頼性があったようだ。
強さや硬さでは剛性と靭性ということになる。
刃物はみねの部分は柔らかいパーライト。刃の部分は硬いマルテンサイトになっている。
すべてを硬くすると脆くなってしまうのでそういう設計にしてある。
昔は経験則でそれを行っていた。
武家屋敷の大きい石は刀を研ぐための物だという。
刃こぼれさせて鋸のようにして斬るということらしい。
そうしないと切れなくなる。
セラミックナイフもミクロの単位でノコギリのような構造になっているらしい。
上級武士が着ている着物は丈夫なので刀では切れない。
鎖骨のところを防御しているので刀では簡単にやられることはない。
現在では日本刀よりマグロ解体用の包丁などの方がはるかに切れる。
耐久性も違いすぎる。コンピュータや生産ラインで管理されて均等な品質が維持されている。
合金、ステンレスなんか江戸時代にはない。材料も合金を作る技術もない。
元素構造なども解明されていないしそういう学問を技術に生かし切れていない。
美術品としての日本刀は素晴らしいが、これは仕方がない。
まあそんなところだろうか。

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