7-2.人称代名詞(1) ― 単数

■ベトナム語の人称代名詞は親族名称からきているため、話し手と聞き手の関係によって特に一人称と二人称はさまざまに変化する。
Tôi là sinh viên. (私は学生です)
Em là sinh viên. (私は学生です)
Hôm nay anh đi đâu? (今日あなたはどこに行きますか)
Hôm nay em đi đâu? (今日あなたはどこに行きますか)
Chị ấy làm việc ở siêu thị. (彼女はスーパーで働いている)
Em chào thầy ạ. ((先生)こんにちは)
■ 人称代名詞
ベトナム語の人称代名詞を、大雑把にまとめると次のようになる。
一人称:tôi 男 女
二人称 中高年ông bà 若い人 anh chị
三人称 中高年ông ấy bà ấy 若い人anh ấy chị ấy
しかし、ベトナム語の人称代名詞は殆どが親族名称から取られたもの。
また、単語の使われ方も一様ではなく、相手との関係によって変化。
そのため、同じ “anh” が関係によって「私」になったり「あなた」になったりする。
一人称:tôi,em, anh, chị, cô, chú, bác, ông, bà …
二人称:em, anh, chị, cô, chú, bác, ông, bà ; thầy …
このように同じ単語がどちらの意味でも使われる。
この中で、 “tôi” だけは常に「私」という意味を持っているので慣れないうちは “tôi” のみでもよい。
ただ、 “tôi” は少し硬い表現であり、また年上の人に使うには少々失礼でもあるので、慣れてきたら下の表現を使うほうが良い。
“tôi” 以外の人称代名詞には全て親族名称(兄・姉・父・母・弟妹など)が使われている。
したがって、変化の仕方もほぼ親族名称と対応する。
どの人称代名詞を使えばいいのかは、相手との(年齢的な)関係を家族に当てはめて考えれば分かりやすい。
ここでは便宜的に、一人称・二人称に分けて説明。
■ 一人称(単数形) 「私」
cháu:自分が相手の子供かそれ以下の年代の場合。男女共通。
em:自分が相手の弟もしくは妹の年代の場合。男女共通。
anh:自分が相手の兄の年代の場合。男性のみ。
chị:自分が相手の姉の年代の場合。女性のみ。
cô:自分が相手のおばの年代の場合。若い女性から中年層まで、比較的広く使われる。
chú:自分が相手の父親と同じかそれよりも若い年代の場合。男性のみ。
bác:自分が相手の父親より年配の場合。ôngよりは若い。
ông:自分が相手の祖父の年代の場合。ただし、年配の男性全般に使われることもある。
bà:自分が相手の祖母の年代の場合。
年を取るにしたがって、 男性であれば cháu → em → anh → chú → bác → ông と、 女性であれば cháu → em → chị → cô → bà という具合に、 よく使う一人称が変化していく。
■ 二人称(単数形) 「あなた」
二人称も一人称と同じ基準によって決まるから、相手との関係と使う単語はほぼ裏返し。
cháu:相手が自分の子供かそれ以下の年代の場合。男女共通。
em:相手が自分の弟もしくは妹の年代の場合。男女共通。
anh:相手が自分の兄の年代の場合。男性のみ。
chị:相手が自分の姉の年代の場合。女性のみ。
cô:相手が自分のおばの年代の場合。若い女性から中年層まで、比較的広く使われる。
chú:相手が自分の父親と同じかそれよりも若い年代の場合。男性のみ。
bác:相手が自分の父親より年配の場合。ôngよりは若い。
ông:相手が自分の祖父の年代の場合。ただし、年配の男性全般に使われることもある。
bà:相手が自分の祖母の年代の場合。
■ 特別な場合の一人称・二人称
上で見たのはすべて他人に対する呼びかけ、親密度が深まった場合のほか、親子の間、学校の教室などでは特別な言い方が用いられる。
1. 先生・生徒の関係の場合 (em←→thầy, cô)
学校内では、生徒は自分を “em” と呼び、男の先生は “thầy” 、女の先生は “cô” を一人称に使う。
また逆に、先生は生徒に対して “em” と呼びかけ、生徒が先生を呼ぶときは “thầy” もしくは “cô” になる。
“thầy” は “thầy giáo” 、”cô” は “cô giáo” の、それぞれ省略形からきている。
thầy:男の先生
cô:女の先生
em:私、僕
2. 親子の間で (con←→bố, mẹ)
親子の間では「子供」を意味する “con” 、「父」の “bố” および「母」を意味する “mẹ” を使って呼びかけが行なわれる。
3. 親密度が深まった場合 (mình, tớ←→cậu)
親密度が深まった場合には通常の単語ではなく、”mình(私)” 、 “tớ(私)” 、 “cậu(君)” を使って呼びかけたり、名前で呼び合ったりもする。
■ 一人称・二人称(単数形)の関係まとめ †
上記の一人称・二人称は大体対応関係にあります。
em←→anh, chị:自分と相手が兄弟の年代の場合
cháu←→cô, chú, bác:自分と相手が親子もしくはそれに準ずる年代の場合
cháu←→ông, bà:自分と相手が祖父母・孫の年代の場合
簡単にまとめればこのように整理できますが、人称表現は主観や相手への配慮が多量に入り込むために一概にこれと断定することはできない。
たとえば、同じくらいの年代であれば共に相手を “anh” と呼び、自分を “em” と呼ぶこともありますし、インタビューで年下のインタビュアーが自らを “cháu” と呼び、それに対し歌手の側はインタビュアーを “cô” と呼んだ例もあり、上のパターン分けにとどまらない組みあわせも実際には多く見られる。
しかし、それらの特別な例も上の基準をもとにして使われているので、この基準を把握しておけば混乱せずに済む。
■ 三人称(単数形)
三人称は基本的に二人称に “ấy” をつけるだけです。ただ、明らかに「彼」「彼女」といった第三者を話題にしていると分かっているときは、この “ấy” が省略されて二人称と同じ形になることもある。
つまり三人称にも年齢によって単語の使い分けがあるのですが、一人称・二人称に比べるとその数は少なくて済む。
anh ấy:若い男性の場合。
chị ấy:若い女性の場合。
cô ấy:若い女性の場合。 “chị ấy” よりももう少し年齢が上というニュアンスが出る。
ông ấy:年配の男性の場合。
bà ấy:年配の女性の場合。
■ 敬称としての用法
名前の前に人称詞を置くことで、「田中さん」の「さん」のような敬称として用いることができる。
人称詞のとき同様年齢による使いわけがあるが、二人称(単数形)に準じる。
注意しなければならないのは、ベトナム人には、「さん」は苗字にではなく、名前に対してつけるということ。
たとえば、フルネームが「グエン・ティ・トゥイー」であれば、「グエンさん」ではなく、「トゥイーさん」としなければならない。
ホー・チ・ミンを親しみをこめて “Bác Hồ(ホーおじさん)” と呼びますが、これはあくまでも特殊な例。
一方、外国人は必ずしもこの原則に当てはまっていなくとも構わない。
anh Tanaka 田中さん(若い男性)
anh Tuấn トゥアンさん(若い男性)
ông Tuấn トゥアンさん(年配の男性)
cô Thuỷ トゥイーさん(若い女性)
bà Thuỷ トゥイーさん(年配の女性)

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