第34期竜王戦七番勝負第3局。藤井聡太vs豊島将之

開始日時:2021/10/30 09:00
終了日時:2021/10/31 18:10
表題:第34期竜王戦七番勝負第3局
棋戦:竜王戦
戦型:角換わりその他
持ち時間:8時間
消費時間:93▲452△479
場所:福島県いわき市「雨情の宿 新つた」
備考:昼休前38手目25分\n2日目昼休前56手目41分\n封じ手時刻:18:22<46手目>\n
先手:藤井聡太三冠
後手:豊島将之竜王

*豊島将之竜王に藤井聡太三冠が挑戦する第34期竜王戦七番勝負は、開幕から挑戦者が2連勝とした。豊島が反撃の狼煙を上げるか、藤井が奪取に向けて邁進するか。第3局は10月30・31日(土・日)、福島県いわき市「雨情の宿 新つた」で行われる。
*立会人は屋敷伸之九段、新聞解説は佐々木慎七段、記録係は田中大貴三段(北島忠雄七段門下)。現地大盤解説会の解説は伊藤真吾六段、聞き手は山口恵梨子女流二段。観戦記は藤井奈々女流初段が担当する。
*対局開始は30日9時、昼食休憩は各日12時30分から13時30分まで。持ち時間は各8時間。1日目18時の時点で手番の対局者が封じ手を行い、2日目に指し継がれる。第3局の先手は藤井となる。
*1日目の朝を迎えた。現地は晴れていて日差しがまぶしい。8時48分、挑戦者入室。信玄袋から扇子など荷物を取り出す。8時54分、竜王入室。懐中時計を手元に置く。一礼の後に豊島が駒箱を開け、2人が駒を並べていく。
*
*※局後の感想※
*36~37手目、39手目、44~45手目、47手目、50手目、55手目、75手目、83手目、最終手に記載。
*
*(棋譜・コメント入力=文)
*[棋譜表示の*はコメント付きの指し手。#は局後の感想が追記された指し手]
▲2六歩
*9時、立会人の屋敷九段が「定刻になりました。第34期竜王戦七番勝負第3局、藤井挑戦者の先手番でお願いいたします」と告げる。両対局者が礼を交わし、藤井が盤上に手を伸ばした。
*
△8四歩
*少し間を置いて豊島が盤上に手を伸ばす。対局室から関係者や報道陣が退室した。
*
▲7六歩
*角換わり志向の立ち上がりだ。最近の藤井は先手番で相掛かりをよく指していた。初手から▲2六歩△8四歩▲7六歩という順は手元のデータベースを調べると、2020年7月の第91期棋聖戦五番勝負第3局以来の採用になる。同じ角換わりでも、現在は▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7六歩と飛車先を決めるケースが多い。飛車先保留の昔ながらの角換わりは久しぶりだ。
△8五歩
*◆豊島 将之(とよしま まさゆき)竜王◆
*1990年4月30日生まれ、愛知県一宮市出身。桐山清澄九段門下。2007年、四段。2019年、九段。棋士番号は264。
*タイトル戦登場は16回。獲得は竜王2期、名人1期、王位1期、叡王1期、棋聖1期の計6期。棋戦優勝は3回。
▲7七角
*◆藤井 聡太(ふじい そうた)三冠(王位・叡王・棋聖)◆
*2002年7月19日生まれ、愛知県瀬戸市出身。杉本昌隆八段門下。2016年、四段。2021年、九段。棋士番号は307。
*タイトル戦登場は6回。獲得は王位2期、叡王1期、棋聖2期の計5期。棋戦優勝は5回。
△3四歩
*竜王戦は読売新聞社が主催する棋戦。特別協賛は野村ホールディングス、協賛は東急グループ、UACJ、旭化成ホームズ、あんしん財団、JRA日本中央競馬会。1987年、十段戦を発展的に解消して設立された。優勝賞金は棋界最高の4,400万円。十段戦の前身となる九段戦を含めると1950年から続いており、長い歴史を持つ。6組に分かれてトーナメント戦を行い、各組の上位11名による決勝トーナメントで挑戦権を争う。七番勝負の勝者が竜王のタイトルを得る。
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▲8八銀
*今日の読売新聞朝刊には今期七番勝負第1局の観戦記が掲載されている。豊島がペースを握った要因を解説している。小暮克洋さんが執筆した。読売新聞オンラインでは竜王戦観戦記のまとめ読みができ、藤井女流初段が執筆したものも公開されている。
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△3二金
*読売新聞社はTwitterで竜王戦の情報を発信している。写真部のアカウントにも本局の写真が豊富にアップされている。
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▲2五歩
*2人の対戦成績は豊島9勝、藤井10勝。2017年の初手合いから豊島が6連勝したが、2021年に入ってから藤井が圧倒している。
△7七角成
*対局場の「雨情の宿 新つた」は、いわき湯本温泉にある1877年創業の老舗旅館。「シャボン玉」など多くの童謡を作詞した詩人、野口雨情が湯治のため逗留したゆかりのある宿だ。竹林に囲まれた露天風呂、小名浜港で水揚げされた海の幸が楽しめる。
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▲同 銀
*いわき市でのタイトル戦開催は、2012年の第70期名人戦七番勝負第3局以来9年ぶりになる。竜王戦が福島県で行われるのは6年ぶり8回目、いわき市では初めて。前期は第3局が福島市の「吉川屋」で予定されていたが中止になったため、福島対局は2年越しの開催となった。
△2二銀
*現地では1日目に将棋大会、2日目に大盤解説会が開かれる。大会では解説会担当の伊藤真六段と山口恵女流二段が指導対局を行う予定だ。どちらも事前申込制で受付は終了している。
▲1六歩
*早い1筋打診は最近のトレンド。後手が受ければ端攻めの起点になり、早繰り銀も選びやすくなる。受けなければ突き越して貯金にする。相手の出方を見て作戦を決める狙いがある。
△1四歩 ▲3八銀
*本局の模様はABEMAで中継される。1日目の解説は八代弥七段と阿部光瑠六段、聞き手は千葉涼子女流四段と中村真梨花女流三段。2日目の解説は阿久津主税八段と井出隼平五段、聞き手は貞升南女流二段と塚田恵梨花女流初段。両日とも、有料チャンネルでは両対局者の個別カメラ映像、現地の棋士と女流棋士によるスペシャル企画を視聴できる。有料チャンネルには中川大輔八段、服部慎一郎四段、渡部愛女流三段、中村桃子女流二段が出演する。
△3三銀
*自然に飛車先を受けた。今年7月に指された第6期叡王戦五番勝負第1局では代えて△7二銀とし、▲3六歩△6四歩▲2四歩△同歩▲同飛△3三角から乱戦になっていた。
▲3六歩
*両対局者は対局前日の10月29日に現地入り。小名浜の観光物産センター「いわき・ら・ら・ミュウ」を訪れ、魚市場や東日本大震災の資料展示を見学した。大きな伊勢エビに驚いて笑みをこぼす姿、震災の説明を聞く真剣な表情が印象的だった。港では遊覧船の前で地元メディアの取材とともに記念品の贈呈を受けた。
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△6二銀
*見学を終えて「雨情の宿 新つた」に到着すると、両対局者は17時から予定されていた検分に臨んだ。使われる盤と駒は日本将棋連盟から運ばれたもの。空調の調整方法や封じ手の段取りを確認し、問題はなく数分で終了した。
▲7八金
*検分後に行われたインタビューでは、豊島が「中盤の入り口あたりで失敗してしまった。感想戦ではやらなかったが、有力な順があった」と手順を詳細に語った姿が印象深い。本局に向けては「やることは変わらない」と意気込みを語った。藤井は見学した魚市場について尋ねられると、「伊勢エビの生きがよくてびっくりしてしまった。福島のおいしい食べ物をアピールできれば」と笑顔で答えていた。
△7四歩
*前夜祭は食事の提供を行わないなど、新型コロナウイルスの感染対策に配慮したうえで開かれた。藤井は「福島のおいしい食べ物や温泉を楽しみつつ、集中して熱戦にしたい」、豊島は「昨年は歓迎会で温かくもてなしていただいた。精いっぱい指して熱戦にしたい」と決意を語った。
▲3七銀
*角換わりでは右銀の使い方で作戦の性格が決まる。棒銀と早繰り銀は攻撃重視、腰掛け銀はバランス重視といえる。こちらに銀を上がると腰掛け銀が消える。積極的な選択だ。
△7三銀
*豊島も追随する。長く角換わりでは腰掛け銀が主流になっていたが、最近は早繰り銀が見直されて採用数が増えている。
▲4六銀
*早繰り銀に構えた。藤井は2020年6月、第61期王位戦挑戦者決定戦で永瀬拓矢二冠(当時)を相手に同じ形を指している。
△9四歩
*豊島の今年度成績は17勝14敗(0.548)。
*対局数はランキング2位タイ、勝数は11位タイ。
*通算成績は530勝247敗(0.682)。
*藤井とのタイトル戦は今年度だけで3回目。夏は王位戦で奪取ならず、叡王戦で失冠と苦杯を喫した。最後の砦となる竜王位の防衛を目指す。
▲6六歩
*藤井の今年度成績は35勝6敗(0.854)。
*対局数、勝数はランキング1位、勝率は3位。現在8連勝中。
*通算成績は248勝46敗(0.844)。
*今年度だけで4回目のタイトル戦登場だが、強者を相手に驚異的な成績を残している。現在の勝率は自身のキャリアハイを更新する勢いだ。
△6四銀
*相早繰り銀になった。2人の過去の対局では、豊島が先手を持って相早繰り銀になった例が2局ある。
▲3五歩
*9時41分の着手。歩を突っかけて動く。豊島が羽織を脱いだ。ここから△3五同歩▲同銀△3四歩▲2四歩△同歩▲同銀△同銀▲同飛と進んだとき、△1五角の王手飛車がない。これが1筋の交換によって早繰り銀が選びやすくなる理由である。後手の△9四歩も同様に王手飛車の筋に備えた意味があるが、一方の先手は▲9六歩を保留して▲6六歩に回している。早い1筋打診で得た主張といえる。
△同 歩
*今年は2011年に起きた東日本大震災から10年になる。いわき市は最大震度6弱を記録、津波によって大きな被害を受けた。藤井は震災の資料展示を見学して「当時は小学生だったが、改めて被害の大きさや復興に向けた歩みを知ることができた」と話している。前夜祭では内田広之市長が「竜王戦開催は復興を頑張ってきた市民にとって大きな力になる」と語った。
▲同 銀
*手元のデータベースで同一局面の実戦例は5局ある。戦績は先手2勝、後手3勝。次の手は△5四角が3局、△3四歩と△8六歩が1局ずつ。最も多い△5四角は▲2四歩△同歩▲同銀に△2七歩を用意している。
△8六歩
*早繰り銀に対する手筋の反撃だ。ここから▲8六同歩△8五歩▲同歩△同飛と進めば十字飛車が決まる。控室では「けっこう手が進みますね」と屋敷九段の声。実は1局ある実戦例が屋敷九段の対局だ。2020年11月の第14回朝日杯将棋オープン戦二次予選で、阿部健治郎七段を相手に後手を持って指していた。「指した記憶はありますが、どう指したのか覚えてない」と笑う。前例は▲8六同銀△5五銀▲7七銀△3六歩▲6八玉△7三角と進んでいた。結果は後手勝ち。屋敷九段は「途中は悪くなってしまって、最後は逆転でした」と話した。
*10時、午前のおやつが対局室に運ばれた。豊島は旬のフルーツ盛り合わせとホットレモンティー、藤井は「じゃんがら」とアイスコーヒー。「じゃんがら」はいわき市の郷土芸能「じゃんがら念仏踊り」に由来する和菓子で、卵と牛乳だけを使って焼いた皮で小倉あんを挟んだもの。旬のフルーツ盛り合わせには福島県産のリンゴとブドウ、いわき産のドライフルーツなどが使われている。
*
▲同 銀
*10時34分、藤井の手が動いた。銀で応じれば継ぎ歩から十字飛車の心配はない。仕掛ける前に突いた▲6六歩が△5五角に備えて生きている。藤井はアイスコーヒーを飲み、羽織を脱いでたたむ。
△4四銀
*前例を離れる銀ぶつけ。左右の銀を繰り出して積極的だ。手番を渡すので大胆な動きといえる。控室では佐々木慎七段が「すごいですね。研究してなかったら銀は出ないですよね」と驚いている。
▲同 銀 △同 歩
*豊島は腕組みをして盤面を見つめる。藤井は前傾姿勢になった。着実にポイントを稼ぐなら▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2八飛の飛車先交換が一案だ。
▲5六銀
*藤井の手は駒台に伸びた。持ち駒は盤上のどこにでも使えるので、敵陣に打ちたくなるものだ。それを自陣の補強に使うとは渋い。気になる△4五角や△8八歩▲同金△6七角といった筋を消しつつ、▲6五歩で銀を追い返す手も見ている。屋敷九段は「腰掛け銀ですか。1歩得なのでじっくりいこうと。これは途端にスローペースですね。長くなります」。この手に4分しか使っていない点には、「2人に共通認識があるんでしょうか。ついていけている人はなかなかいないと思いますよ」と話した。
*
△3六歩
*じっと歩を垂らした。早繰り銀をさばいたあとは飛車のコビンが急所になりやすい。佐々木慎七段は「動きを牽制した手ですね。条件次第ではいきなり△3七銀と打ち込む手もありそうです。取られにくいですし、仮に取られても歩なので、リスクが低い手です」と話す。一例としては▲6五歩△7三銀▲7七銀が考えられるという。「どこまでが豊島さんの研究なのか気になりますね」とも。豊島は事前研究の範囲内ではほとんど時間を使わないスタイルで知られる。相掛かりが続いていた今シリーズで、本局の角換わり早繰り銀というやや意外な策にも対応する引き出しの広さには驚かされる。
*11時30分、藤井が30分ほど使っている。脇息にもたれてうつむく。考慮中に12時を過ぎた。1時間を超える長考である。豊島とは対照的に時間を惜しみなく使っている。
*
*※局後の感想※
*ここで▲2四歩△同歩▲4六角に「対応が難しいですか」と豊島。これも有力だったようだ。
▲6八玉
*12時4分、藤井が着手。1時間3分の長考だった。圧力をかけられた3筋から離れつつ、居玉を解消して戦いに備える。次に▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2六飛から垂れ歩を取りにいく含みもある。再び手番を得た豊島はどこに目を向けるか。積極的な手として△3三桂は見えるが、▲4六歩と受けられると忙しくなる。
*12時30分、豊島が25分使って昼食休憩に入った。消費時間は▲藤井2時間8分、△豊島1時間0分。昼食は豊島が「いわき七浜海鮮丼」とホットレモンティー、藤井が「サンシャイントマト香る麓山高原豚ロース勝つカレー」と生絞り無添加ジュース(柑橘ミックス)。いずれも地元の食材がふんだんに使われている、竜王戦のために用意された特別メニューだ。対局は13時30分に再開される。記録係の田中三段に話を聞くと、△7三角を考えてみたいという。以下▲2六飛は△3五銀▲2七飛△4三金で厚みを主張すれば方針がわかりやすい。よって△7三角には▲2四歩△同歩▲4六角でどうか。この変化は▲2四歩が入るか否かが急所になる。
*再開が近づき、藤井が盤に向かっている。13時30分、屋敷九段が「再開の時間になりました」と告げるとほぼ同時に、豊島が対局室に戻った。13時50分、豊島は引き続き時間を使っている。本局で初めての長考になった。14時30分、「豊島先生、2時間使われました」と記録係の声。再開からは1時間がたった。控室では屋敷九段が「方向性が難しいので長考になりましたね」と話している。すさまじい集中力。藤井は時折、目を休めるようにハンカチで顔を押さえてうつむく。
*
*※局後の感想※
*ここで△5四歩は▲6五歩△5五銀▲同銀△同歩▲2四歩△同歩▲6四歩△同歩▲6二歩で先手ペース。
△4五銀
*14時46分、ついに豊島の手が盤上に伸びた。中央の要所を守る腰掛け銀に働きかける。飛車を攻めるには△5五角と打ちたい。ここから▲4五同銀△同歩と銀を盤上から消せば、その実現に近づく。「そこでもう一度▲5六銀と打つ手は得なのか損なのか。また長考になる気がします」と屋敷九段。焦点は飛車のコビンを巡っての攻防とはっきりしているが、何を指せば目標に近づくかが非常にわかりにくく難解だ。屋敷九段は「今日はここから10手も進まないんじゃないでしょうか」と話す。
*15時、午後のおやつの時間になった。メニューは両者とも「フェイジョアタルトとフェイジョア生ドーナツ」。フェイジョアは南米ウルグアイ周辺地域原産のフルーツで、いわき市で栽培されているものをピューレにして使っている。飲み物は豊島がグレープフルーツジュースを氷なしで、藤井がアイスレモンティーを注文した。控室では撮影用のおやつを屋敷九段と佐々木慎七段が試食している。「柑橘系でさわやかな味」と屋敷九段。生のフェイジョアは佐々木慎七段によると「キウイとグレープフルーツに似ている」とのこと。
*15時25分、ABEMA出演者の中川八段が控室を訪れて屋敷九段と談笑している。「難しい手だ」「珍しい筋だね」との評判。上述の▲4五同銀△同歩▲5六銀が有力と見られている。15時46分、藤井の考慮時間が1時間に達した。長考の応酬で2人の気迫をひしひしと感じる。16時18分、長考は続く。藤井はハンカチを顔に当ててうつむく。
*
▲2四歩
*16時31分の着手。1時間45分の長考で飛車先の歩を突いた。動きのあった午前に比べて、午後は再開から約3時間で2手しか進んでいない。
*
*※局後の感想※
*藤井はここで△5六銀が気になったようだ。豊島は「あまり考えなかった」。以下▲2三歩成△3七銀▲2四飛△3五角▲3四飛△5七角成▲7七玉△5五銀▲3二飛成△同飛▲同と△6六銀▲8八玉△6七銀直成▲6九金△7八成銀▲同金△6七金▲6九銀△7八金▲同銀△6八金▲4一飛△6二玉▲4二飛成△5二飛▲同竜△同金▲8二飛が並べられ、ここまで進むと「負けですか」と豊島。藤井は「ちょっとやりづらいですかね」と話していた。
△同 歩
*読み筋だったか、素直に歩を取る。代えて△5六銀も考えられたため、佐々木慎七段は意外そうな様子で継ぎ盤の駒を動かしている。しばらく検討して、△5六銀▲2三歩成△3七銀▲同桂△同歩成▲3二と△2八と▲5六歩△3二飛▲4三銀△3七飛成という一直線の攻め合いは後手がやれそうとの結論になった。よって△5六銀にはじっと▲同歩と応じ、以下△2四歩でどうか。先手玉のコビンが開いて後手の得にも思えるが、△5五銀を消して先手のメリットにもなりうる。先の長考にはこうした細かい比較も含まれていたのだろう。
▲4五銀 △同 歩 ▲2四飛 △2三歩
*藤井はすぐには指さない。3筋の歩を狙う▲2六飛のほか、積極的に踏み込む▲3四飛もある。歩の裏に潜り込めば▲2二歩が受けづらい。
*
*※局後の感想※
*ここで▲2六飛は△4六歩▲同歩△3五銀▲2五飛△4六銀▲8五飛△同飛▲同銀△2八飛▲3八銀△3七歩成▲同桂△同銀成で先手難局。藤井は「飛車はぶつけづらいですか」と首をかしげた。
▲3四飛
*敵陣に近いので怖いところもあるが、踏み込んだ。気になるのは△3三金で、▲3六飛は△2七角▲3九飛△2八銀で身動きが取りにくくなる。だが、△3三金には▲3五飛とひとつ引くのが好手のようだ。理屈は単純だが、あまり見ない形で盲点に入りやすい。柔軟な発想といえる。佐々木慎七段は「意表を突かれます。豊島さんはここで△3三金と決めていても、▲3五飛に何を指すか難しいので、封じ手にするのではないでしょうか」と話す。
*17時31分、封じ手の定刻まで30分を切った。控室では屋敷九段と佐々木慎七段が検討を進めて、△3三金▲3五飛△4六歩▲同歩△2八角という順が有力視されている。急所を制する△4六角成が大きな手になり、先手が飛車の処置に困るようなら▲3四飛をとがめて流れがいい。18時、盤側から屋敷九段が定刻になったことを告げる。豊島の返答はない。じっと盤面を見つめている。そのまま10分がたち、豊島の考慮時間は1時間を超えた。18時22分、豊島が1時間14分使ったところで封じる意思を示した。1日目の消費時間は▲藤井4時間24分、△豊島3時間31分。封じ手の記入を終えて戻ってきた豊島が、藤井に2通の封筒を差し出す。藤井が署名を入れて豊島に返し、豊島が屋敷九段に預けて1日目が終了した。対局は31日9時に再開される。封じ手は屋敷九段が△5五角、佐々木慎七段と伊藤真六段が△3三金、山口恵女流二段が△4六歩と予想した。
*
*
*※局後の感想※
*ここで△5五角も有力だったようだ。以下▲2二歩△3三桂▲2一歩成△1九角成▲1一とで難しい。手順中△3三桂と逃げられるのが本譜との違いだ。豊島は「これもありましたか」と話した。
△3三金
*2日目の朝、現地は晴れ。昨日に比べてやや雲が多い。8時45分、藤井入室。8時50分、豊島入室。駒を並べ終えると、記録係の田中三段が棋譜を読み上げて2人が1日目の指し手を再現していく。9時に再現が終わり、屋敷九段が「それでは封じ手を開封いたします」と盤の脇に移動した。2通の封筒にはさみを入れ、封じ手用紙を広げる。「封じ手は△3三金です」。豊島が着手すると、藤井が前のめりになって盤面に顔を近づけた。屋敷九段が「それでは、対局を再開いたします」と告げて、2日目が始まった。
*9時20分、控室では継ぎ盤で昨日の検討を整理している。伊藤真六段は「△3三金は本命だったので、10分くらいで指すと思いましたけど」と話している。
*
▲3五飛
*9時25分の着手。機動力のある飛車が1マスずつステップを踏むのは面白い動きだ。歩を取らないことで△2七角を避けている。本命視されていたのは△4六歩だが、▲同歩の一手とも限らないようだ。複数の応手が考えられると、当然ながら時間を使って精査する必要が出てくる。豊島が封じ手の時点でどこまで想定していたのかは興味深い。
*1日目の検討では△4六歩▲同歩△2八角▲6五歩△4六角成▲3三飛成△同桂▲6四歩△同歩が一例として調べられていた。飛車と金銀の2枚換えで形勢判断は難しい。佐々木慎七段は新たな有力手として△4六歩に▲3四歩を調べている。以下△4四金は▲2五飛△4七歩成▲2三飛成△2二歩、△2四金は▲8五飛△同飛▲同銀△4七歩成▲2二飛で難しい。後手が飛車をさばかれることを嫌えば、△4六歩▲3四歩△3二金が一案のようだ。以下▲4六歩△2八角▲6五歩△4六角成と進めば、▲3四歩が邪魔になって飛車を切る筋が消え、先手の損になっている。
*9時54分、「豊島先生、4時間使われました」と記録係の声。豊島は天井を見上げたり、後頭部をかいたり。悩ましそうな様子だ。
*10時、午前のおやつが対局室に運ばれた。豊島は旬のフルーツ盛り合わせとホットレモンティー、藤井は温泉まんじゅうと味噌まんじゅう、アイスカフェラテ。フルーツ盛り合わせは1日目と違った盛りつけで工夫がなされている。
*
*
*※局後の感想※
*検討で本命と見られていた△4六歩▲同歩△2八角は有力だった。以下▲6五歩△4六角成▲3三飛成△同桂▲6四歩△4五桂▲5八銀△3七歩成▲同桂△同桂不成▲5九金△6四馬▲3三角△6二玉▲5五銀△7三馬▲6四歩△同歩▲1一角成は形勢不明。豊島は「有力かもしれないと思ったんですけど、2枚換えの物量でやられてしまうかと思って。この変化は有力だった気がします」と話した。
△5五角
*10時4分、豊島の手が動いた。急所のラインに角を据える。検討で予想されていなかった手に、伊藤真六段は「やり直しです」。より攻撃的な△4六歩と比べるとバランスを重視した選択といえる。「激しい展開は自信が持てなかったのかもしれません」と伊藤真六段。藤井は盤に近づいて集中している。
▲2二歩
*手筋の一着。飛車の横利きがあるが、△2二同飛と働きの悪い筋に呼ぶことでポイントを稼げる。
△同 飛
*控室では▲3二歩が有力と見られている。リズムのいい歩の連続技だ。以下△3二同飛は▲4三角△2二飛▲3一銀、△3二同金は▲3一銀△1二飛▲2二歩で調子よく攻めが続く。受けがないときは攻め合いを目指せ、というわけで▲3二歩には△1九角成でどうか。以下▲3一歩成が自然な継続手だが、飛車の横利きを止めたことに目をつけて▲4五飛と寄り、次に▲8五飛の大転回を狙う構想もある。佐々木慎七段は「▲4五飛は気づきにくい」とうなる。
*10時30分、現地では大盤解説会が始まった。担当は伊藤真六段と山口恵女流二段。多くの来場者でにぎわっている。
*
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*※局後の感想※
*ここで▲3六飛は有力だった。以下△1九角成▲3四歩△4三金▲3三角△同桂▲同歩成△3一香▲3二歩△1八馬▲3九飛は先手よし。本譜は先手にとって気になる変化が生じた。
▲3四歩
*10時55分、藤井が着手。垂れ歩で技をかけるのではなく、上から押さえた。形よく逃げる△4三金には▲4五飛が金に当たる。以下△4四歩▲3五飛△1九角成には▲3三角の強襲が成立しそうだ。飛車を2筋に呼んだ効果がよく出ている。
*
△4三金
*3筋に拠点を築いたことで、角の利きがそれると▲3三角の強襲が生じる。間接的に△1九角成を受けているわけで、高度な指し回しである。伊藤真六段はすぐ▲4五飛と寄るよりも、手を渡して反動を利用したいという。例えば▲5八金と手入れしておくのはどうか。「後手からは△3七歩成▲同桂△4四銀▲3六飛△3五歩という筋もあるので、そうした動きに備える必要もあるかもしれないですね。ただ、△1九角成を受けなくていいのは心強い気がします」と伊藤真六段。屋敷九段は「ここは手が難しいので考えると思います」とうなずく。相手の手を消すなら▲3六飛が一案で、以下△3五歩▲同飛△4四銀▲2五飛△2四歩▲3一銀△2三飛▲3二角は先手有望。手が広いことがわかる。
*11時26分、藤井が20分ほど使っている。残り時間は2時間と少し。豊島とは1時間以上の差がついている。
▲4五飛
*単刀直入に応手を尋ねる。伊藤真六段は△4四歩では心もとないので、△4四銀や△5四銀が第一感と話していた。進行の一例は△4四銀なら▲2五飛△2四歩▲3一銀△2五歩▲2二銀成△2八飛▲5八金△3七歩成、△5四銀なら▲2五飛△3四金といった要領。銀をどちらに打つかは些細な違いのようだが、△4四銀は▲2五飛△2四歩▲2三歩△8二飛▲2四飛のときに△3五銀という活用があり、△5四銀は受けの形がいい。一長一短で比較は難しい。
△5四銀
*豊島は△5四銀を選択。自陣への角の利きを止めず、金にヒモをつけて受けに強い手だ。一方で▲2五飛と回られたときに飛車に働きかける手段が限定されている。
▲2五飛
*軽快なフットワークで揺さぶる。次は▲3一銀△3二飛▲2三飛成△3一飛▲2二角と強引に攻め込んで手が続く。「突破されるときついですね」と屋敷九段。どう受けるかだが、△2四歩は▲2三歩の切り返しが見えている。よって強く△3四金と上がって迎え撃つ。金が離れて▲5五飛からの猛攻が見えているので怖いが、しのげば△2八飛の反撃もあって辛抱のしがいはある。伊藤真六段は「ここでどれだけ読めるかが勝負だと思います」と話す。
*12時30分、豊島が41分使って昼食休憩に入った。消費時間は▲藤井5時間53分、△豊島5時間23分。昼食は豊島が「伊達鶏そばといわきとっくり芋のとろろ飯」とホットレモンティー、藤井が「いわきの魚とじゅうねんの天ざるそば」と生絞り無添加ジュース(リンゴ)。「じゅうねん」はエゴマの別称で、栄養価の高さから「10年長生きする」意味でこう呼ばれている。対局は13時30分に再開される。
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*※局後の感想※
*ここは△3四金と上がるべきだった。以下▲5五飛△同銀右▲3一角△5二飛▲2二角打△2八飛▲3八銀△3七歩成▲3九金△2四飛成は後手が指せる。豊島は「金が上ずって▲3一角の筋ができるので嫌だったんですけど、有力でしたね」と認めた。
△3七歩成
*13時30分、屋敷九段が「再開の時間になりました」と告げて部屋を出ていく。少し間があって豊島の手が盤上に伸びた。堂々とした攻めだ。突破を狙う▲3一銀の筋にはスピード勝負で対抗しようとしている。攻め合いでと金の存在は大きく、持ち駒が充実すれば△4七と~△5七とも厳しくなる。一例として▲3一銀△3二飛▲2三飛成△3一飛▲2二角△3四飛▲5五角成△同銀右▲3四竜△同金▲3一飛△4一歩▲3四飛成△2八飛は後手有望。これはと金の威力がよくわかる。
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▲同 桂
*意表の一着。と金を取る手があるとは。しかし、桂よりもと金の価値が高いと考えれば納得がいく。攻防に働いている角の利きがそれる面もある。控室では△3七同角成▲3一銀△3二飛▲2三飛成△3一飛▲2二竜△3四飛▲2一竜△4一歩▲2三角を調べている。手順中▲2二竜と入れるのは角の利きをそらした効果だ。ただ、駒損が大きいので成否はなんともいえない。屋敷九段は「少し攻めが心細い印象があります」と話す。
△同角成 ▲3一銀
*と金を払ってから切り札の銀打ちは巧みな組み立てという印象だ。自玉への脅威度を細かくコントロールしている。
△3二飛
*玉形に不安のある後手は駒得が主張になる。居玉なので▲2三飛成と突破されたときの響きも大きいが、△3一飛と銀を取れば攻守に使いどころがある。
▲2二角
*14時26分、藤井の手が駒台に伸びた。なんという重い攻め。銀を守るためとはいえ、角を投入するのは思いつかない。次の▲2三飛成は着実だが、自ら駒を渋滞させている面もある。ただ、△3四飛▲2三飛成△8八歩▲3四竜△同金▲3二飛△4一歩▲3四飛成は駒得の先手が手厚い態勢といえる。一見すると鈍重な攻め駒も、後手が居玉なので響きが大きく、働きは悪くないと見ることもできる。「驚きました。駒損しないで攻めるのが大事なんですね」と屋敷九段。佐々木慎七段も「指しにくい手を掘り下げるのはさすが」と感嘆している。検討が進み、上記の手順中△4一歩では△5二金と受けて▲3四飛成△4七馬▲5八金△同馬▲同玉△3三歩がまさるという。後手は駒損を補う迫り方があるかどうか。方針がわかりやすいため先手を持ちたいという評判だ。
*15時、午後のおやつが対局室に運ばれた。豊島は温泉まんじゅうと味噌まんじゅう、生絞り無添加ジュース(リンゴ)。藤井は飲み物だけで、いちごサイダーとアイスティーを注文した。15時27分、豊島の考慮時間は1時間に。異筋の角に意表を突かれたか、長考になった。通計の消費時間が逆転して藤井よりも多くなっている。長考が続き、とうとう残り1時間になった。長机に残り時間を示す早見表が出され、記録係がペンで数字を消していく。
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△2四桂
*15時54分、豊島が着手。飛車の成り込みを防いで桂を打った。狙いを消す受けだが、この桂の活用は難しい。効率の悪さを承知で辛抱した手だ。手番を得た先手はどこに目を向けるか。大転回する▲8五飛は気分がいいが、じっと△7一金と受けられて角と銀の重い形が負担になる。
*現地大盤解説会では佐々木慎七段と伊藤真六段が解説中。佐々木慎七段は「藤井さんも意表を突かれたのでは。ここは考えると思います」と話している。
▲8五飛 △2七馬
*すぐに受けるのではなく、いったん金取りに馬を寄った。自然な対応は▲5八金だが、金を動かすことで△3四飛から成り込む含みが生じる。ただ、▲5八金△7一金▲1一角成△3四飛▲2一馬△3九飛成▲7二香△7三桂▲8三飛成△8二歩▲7一香成△8三歩▲4三馬は先手の勝ち筋に入る。先手にとって▲5八金は守りを固めて基本的にプラスの手なので、うまくとがめる順を用意できないと後手が困ることになる。検討陣も豊島の意図をつかめていない。佐々木慎七段は「差が開いた気がします」と話した。
*16時42分、藤井が手を止めて20分ほどになる。残り時間は1時間を切った。
▲5八金
*16時52分の着手。手に乗って側面の守りを強化できた。居玉の後手玉とは安定感に大きな差がある。ここから△7一金▲1一角成△3一飛▲3三香△同桂▲2二馬は後手がはっきり苦しい。手順中▲1一角成とあっさり銀を見捨てて攻めるのがよく、飛車を目標にして攻めが続く。
△3四飛
*飛車成りを受けずに攻め合う。しかし▲8一飛成が桂を取りながら急所をにらむのに対し、△3九飛成は空成りで厳しさは大違い。「だいぶ形勢を悲観している感じがします」と佐々木慎七段。豊島はゆっくりと立ち上がって部屋を出ていった。
▲8一飛成
*ズバッと飛車を成って挟撃態勢を築く。初志貫徹の△3九飛成には▲8四桂と打ち、次に▲7二桂成を狙えば速い。
△4九馬
*馬を入って飛車との協働でスピード勝負を挑む。次の△3八飛成は痛烈だ。先手は受けに適した駒がない。
▲9一龍
*香を補充して△3八飛成に▲5九香の受けを用意した。後手は目ぼしい持ち駒がないので追撃手段が難しい。
△3八飛成 ▲5九香
*冷静に受ける。後手の攻めが途切れれば▲8四桂~▲7二桂成の余裕が回る。
△4六歩
*歩を使って追いすがる。危険な状況に追い込んで焦りを誘いたい。
▲同 歩 △4七歩
*と金攻めで防壁を崩しにかかった。踏み込むなら▲8四桂で、△4八歩成▲7二桂成△5八と▲7七玉△5九馬▲8八玉△7一香のときに明快な寄せがあるかどうか。控室ではいったん▲3九歩で大駒の位置をずらす手筋も検討されている。以下△同竜なら▲8四桂△4八歩成▲7二桂成△5八と▲同香で、先手玉はだいぶ安心できる形になる。ただ、▲3九歩には△3二竜と引いて粘る選択肢も与える。はっきり勝ちかどうか、結論は出ていない。
▲8四桂
*小技を使わず、まっすぐに寄せを目指した。これは△4八歩成▲7二桂成△5八と▲7七玉△5九馬▲8八玉△7一香のときに決め手があるかが焦点のルートである。以下▲同成桂は△6八とで後手玉が詰まず、先手玉は詰めろ。控室では明快な解決策が出なかったため、▲8四桂ではなく▲3九歩を調べていた経緯があった。
*17時44分、豊島は残り10分になった。残り9分、8分……。藤井はすでに決め手を発見しているのかどうか。
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*※局後の感想※
*感想戦では触れられなかったが、上記の▲7一同成桂は詰めろになっていた。詳細は後述する。
△4八歩成 ▲7二桂成 △5八と ▲7七玉
*ひらりと逃げ出す。と金で竜の横利きが止まっていることが大きく、△5九馬に▲8八玉と落ちた形はほぼ詰まないため寄せに専念できる。
△5九馬 ▲8八玉
*先手玉は詰まず、後手玉は▲6一竜までの詰めろ。しかし△7一香と受けた形も粘り強い。
△7一香
*豊島は香を打って席を立つ。さあ、問題の局面だ。
▲同成桂
*淡々とした手つきで香を取る。後手玉は詰めろになっていない。ここは先手玉に迫る余裕がある。
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*※局後の感想※
*控室では当初、後手玉が詰めろではないと見ていたが、精査してみると詰めろになっていたことがわかった。すなわち、▲6一成桂△4一玉▲4二金△同金▲同銀成△同玉▲4四香△4三銀▲4一金△3二玉▲8二竜△5二銀打▲同竜△同銀▲3三銀△同竜▲3一角成まで。本譜は詰ますルートではなかったが、問題は生じなかった。
△6八と ▲6一成桂 △4一玉 ▲5一成桂 △3二玉
*重い攻めに見えた角と銀が後手玉の包囲に貢献している。
▲8二龍
*成桂で追い回してから竜で王手。合駒請求だ。後手は出せる駒が金しかない。
△4二金打
*金を手放しても先手玉の詰めろは維持されている。うっかり▲4二同銀成は△2二玉で捕まらなくなる。藤井はうつむき、何度か小さくうなずく。
▲6八金
*と金を払って詰めろを解消した。王手で取り返す△6八同竜には▲7八金としかりつけて明快だ。以下△3八竜は▲4四香の余裕が生じる。
△同 馬 ▲3四香
*連絡のない地点に香打ち。竜を引かせれば先手玉の詰めろが消えるので、△3四同竜に▲1一角成で受けなしに追い込める。恐るべき超絶技巧。うつむく豊島の肩が落ちている。一分将棋に入った豊島は盤面を見つめ、「負けました」と頭を下げた。終局時刻は18時10分。消費時間は▲藤井7時間32分、△豊島7時間59分。藤井が3連勝で竜王位奪取と最年少四冠まであと1勝に迫った。第4局は11月12・13日(金・土)、山口県宇部市「ANAクラウンプラザホテル宇部」で行われる。
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*※局後の感想※
*一手一手が難しい戦いになったが、藤井の▲2二角(61手目)が異筋の好手でリードを奪った。豊島は△3七歩成(56手目)に代えて△3四金が有力だったと振り返っている。藤井は「中盤戦が非常に難しく、正しい判断ができていないところがあった。反省して次に生かしたい」と語った。
まで93手で先手の勝ち

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