第34期竜王戦七番勝負第1局。藤井聡太vs豊島将之

開始日時:2021/10/08 09:00
終了日時:2021/10/09 19:25
表題:第34期竜王戦七番勝負第1局
棋戦:竜王戦
戦型:相掛かり
持ち時間:各8時間
消費時間:123▲476△479
場所:東京都・セルリアンタワー能楽堂
備考:昼休前33手目50分\n2日目昼休前54手目18分\n封じ手時刻:18:00<44手目>\n
先手:藤井聡太三冠
後手:豊島将之竜王

*豊島将之竜王に藤井聡太三冠(王位・叡王・棋聖)が挑戦する第34期竜王戦七番勝負(読売新聞社主催、野村ホールディングス株式会社特別協賛、東急グループ、株式会社UACJ、旭化成ホームズ株式会社、一般財団法人あんしん財団、JRA協賛)第1局が10月8、9日の両日に東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」で行われる。立会人は中村修九段、副立会人は松尾歩八段、記録係は広森航汰三段(中座真七段門下)、読売新聞観戦記は小暮克洋さんが担当する。対局開始は8日9時。持ち時間は2日制の各8時間。昼食休憩は両日とも12時30分から13時30分。おやつは10時と15時。封じ手は1日目18時の時点で手番の棋士が行う。開幕局の本局は振り駒で先後を決定する。
*8時46分、豊島が席に着く。懐中時計を駒台の下に置く。藤井の入室は1分後、下座に着くと信玄袋から扇子やハンカチを取り出す。気息を整えて、両者が一礼すると豊島が駒箱に手を掛けた。駒袋を開けて駒を盤上に散らす。上座の豊島が王将を据え、続いて藤井が玉将を手にする。両者、大橋流で駒を並べていく。寺口智之・野村ホールディングス株式会社代表執行役副社長が行った振り駒は、と金が4枚出て、藤井の先手に決まった。
*9時となり、立会人の中村修九段の合図で対局が始まった。
▲2六歩
*注目の初手はお茶を飲んでからの▲2六歩だった。
△8四歩
*後手番の豊島は△8四歩と飛車先の歩を突いた。
▲2五歩
*◆藤井 聡太(ふじい そうた)三冠(王位・叡王・棋聖)◆
*2002年7月19日生まれ、愛知県瀬戸市出身。杉本昌隆八段門下。2016年、四段。2021年、九段。棋士番号は307。
*タイトル戦登場は6回。獲得は王位2期、叡王1期、棋聖2期の計5期。棋戦優勝は5回。
△8五歩
*◆豊島 将之(とよしま まさゆき)竜王◆
*1990年4月30日生まれ、愛知県一宮市出身。桐山清澄九段門下。2007年、四段。2019年、九段。棋士番号は264。
*タイトル戦登場は16回。獲得は竜王2期、名人1期、王位1期、叡王1期、棋聖1期の計6期。棋戦優勝は3回。
▲7八金
*【藤井の公式戦成績】
*通 算=244勝46敗(0.841)
*昨年度=44勝8敗(0.846)
*今年度=31勝6敗(0.838)
△3二金
*【豊島の公式戦成績】
*通 算=526勝244敗(0.683)
*昨年度=33勝19敗(0.635)
*今年度=13勝11敗(0.542)
▲3八銀
*戦型は相掛かりになった。予想された進行のひとつである。
△7二銀
*両者の対戦成績は豊島9勝、藤井8勝。9月13日に行われた第6期叡王戦五番勝負第5局以来の顔合わせとなる。
▲9六歩
*両者が対戦したタイトル戦は今シリーズが3回目。過去2回はいずれも今期で、下記の通り。
*<第62期王位戦七番勝負>
*藤井聡太王位 4-1 豊島将之竜王
*<第6期叡王戦五番勝負>
*藤井聡太二冠 3-2 豊島将之叡王
△5二玉
*竜王戦は読売新聞社が主催する棋戦。特別協賛は野村ホールディングス株式会社、協賛は東急グループ、株式会社UACJ、旭化成ホームズ株式会社、一般財団法人あんしん財団、JRA。予選のランキング戦を1組から6組に分けて行い、優勝者や上位進出者11人が決勝トーナメントで挑戦権を争う。竜王と挑戦者による七番勝負は例年10月から12月にかけて行われる。優勝賞金は棋界最高の4400万円。現在のタイトル保持者は豊島将之竜王。
*
▲6八玉
*相掛かりは互いの玉と飛車の位置で形が決まってくる。どちらがどのタイミングで飛車先の歩を交換するかが序盤のポイントといえる。
△1四歩
*後手はこのタイミングで△1四歩と突く。代えて△8六歩から飛車先の歩を交換するのは▲同歩△同飛▲8七歩にそこで飛車を引く位置を決めなくてはいけない。相手の出方をうかがっている意味もあるだろう。
▲7六歩
*藤井の竜王戦成績は32勝4敗(0.889)。第30期からの参加で、今期が5期目となる。ランキング戦優勝は第30期6組、第31期5組、第32期4組、第33期3組、第34期2組。5期連続優勝は史上初。今期はランキング戦2組からの出場で、阿久津主税八段、広瀬章人八段、松尾歩八段、八代弥七段を破り優勝。決勝トーナメントでは山崎隆之八段、八代弥七段を破って決勝進出。決勝三番勝負では永瀬拓矢王座を2勝0敗で破り、挑戦権を獲得した。本棋戦の七番勝負登場は初となる。
△8六歩
*豊島の竜王戦成績は59勝22敗(0.728)。第21期からの参加で、今期が14期目となる。ランキング戦優勝は第21期6組、第22期5組、第25期3組。第32期七番勝負で広瀬章人竜王を4勝1敗で破り、初の竜王位に就く。翌年は羽生善治九段の挑戦を4勝1敗で退けて初防衛を果たす。
▲同 歩
*読売新聞オンラインの特集ページに七番勝負直前特集が掲載されている。両対局者のインタビューや日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の見解など頂上決戦の見どころは必見だ。また、将棋連盟HPでも展望記事が掲載されている。
△同 飛
*後手は先手の▲7六歩を見て飛車先の歩を交換した。
▲3六歩
*▲3六歩は比較的新しい指し方といえる。この歩を突くことによって▲3七桂と素早く攻め駒を活用できるようになった。
△7四歩
*今朝の読売新聞朝刊には上村亘五段が執筆した挑戦者決定三番勝負第1局第2譜が掲載されている。若杉和希カメラマンが撮影した上着を脱ぐ藤井の姿が収められている。読売新聞写真部Twitterには若杉カメラマンが両対局者を中心に追ったカットが多数アップされている。
▲2四歩
*本局はABEMAで動画中継が行われている。放送開始は両日とも8時30分。
△同 歩
*ABEMAマルチアングル放送の出演者は藤井猛九段、佐藤天彦九段、戸辺誠七段(1日目のみ)、折田翔吾四段(2日目のみ)、室谷由紀女流三段、山口恵梨子女流二段、脇田菜々子女流初段。
*山口恵女流二段は読売新聞オンラインの特集ページでコラムを寄稿している。
▲同 飛
*先手はこのタイミングで2筋の歩を交換した。平凡な△2三歩には▲7四飛と歩を取る手もありそうだ。▲3六歩の効果で△2八歩の桂取りには▲3七桂と逃げることができる。
*手元のデータベースで現局面の将棋が2局集録されている。昨年の10月27日に行われた第33期竜王戦6組昇級者決定戦の▲本田奎五段-△出口若武四段(当時)戦と4月29日に行われた第69期王座戦本戦の▲木村一基九段-△澤田真吾七段戦。後手はいずれも△7三銀と上がっている。結果は2局とも先手が勝った。
△7三桂
*豊島の指し手は△7三桂だった。△7四歩の継続手である。▲7四飛を許すが、右桂を活用する攻撃的な構えを採る。先手の▲9六歩に代えて▲1六歩と指したのが4月30日に行われた第92期ヒューリック杯棋聖戦挑戦者決定戦の▲渡辺明名人-△永瀬拓矢王座戦。△7三桂以下、▲3七桂△7六飛▲6六角△2三歩▲2六飛△3四歩▲7七金△6六角▲同歩△9五角▲8六歩△同角▲7八銀△8五桂と進んでいる。両者ともにこの将棋をベースにしているのかもしれない。
▲7四飛
*セルリアンタワー能楽堂は東京・将棋会館と同じ東京都渋谷区にある。日本将棋連盟は設立100周年となる2024年に同じ渋谷区内への移転が予定されている。将棋の聖地として多くのファンが訪れる人気スポットになった。
*藤井はわずか1分で▲7四飛と歩を取った。前手で紹介した類似形の▲渡辺明名人-△永瀬王座戦は先手が勝ったものの、途中は後手がうまく指していた。それを踏まえて藤井はこの手に期待しているのかもしれない。先手が歩得になった。
△6二金
*セルリアンタワー能楽堂で竜王戦が行われるようになったのは第30期から。いずれも第1局に行われている。対戦カードと結果は下記の通り。
*第30期 ▲羽生善治棋聖 ○-● △渡辺 明竜王
*第31期 ▲羽生善治竜王 ○-● △広瀬章人八段
*第32期 ▲豊島将之名人 ○-● △広瀬章人竜王
*第33期 ▲羽生善治九段 ●-○ △豊島将之竜王
*
*豊島はノータイムで△6二金と上がった。▲7四飛は待ち構えていた一手かもしれない。
*10時、午前のおやつは藤井が紫芋モンブラン~ハロウィン オータムシーズンコレクション~、アイスコーヒー。豊島がフルーツ盛り合わせ、アイスレモンティー。藤井の注文したおやつはセルリアンタワー東急ホテルのペストリーショップで購入できる。今月31日までの限定商品となっている。
*
▲8七歩
*藤井は44分の考慮で▲8七歩と打った。
△8一飛
*飛車の引き場所は8一だった。7二銀-6二金と2段目に金銀を上がったため、下段飛車の利きが3筋まで通っている。
▲2四飛
*藤井は飛車を2筋に戻った。局面が落ち着けば歩得を生かしやすくなる。
△2三歩
*現地で行われる特別観戦プログラム「竜王戦プレミアム」には佐藤康光九段、鈴木大介九段、高見泰地七段、三枚堂達也七段、山田久美女流四段、貞升南女流二段が出演する。最高峰のタイトル戦を体感する究極の観戦プログラムと題し、対局開始から終局まで堪能できるスペシャルイベントだ。なお、竜王戦プレミアム、大盤解説会ともに申し込みはすでに締め切っていますので、お気をつけください。
▲2五飛
*10時46分の着手。
*前日の17時から検分が行われた。まずは白足袋を履いた藤井が現れ、下座に着く。続いて白足袋を履いた豊島が姿を見せた。関係者一同が一礼して、豊島が駒を盤上に。玉、金、桂と3枚ずつ並べると、天井の照明を確認する。特に問題はなかったようで、両者が一礼して検分が終わった。
*藤井は飛車を2五に引いた。6五の地点を押さえることで▲7五歩~▲7四歩の攻め筋を見ているのかもしれない。
*11時36分、豊島が手を止めて50分が経過した。どういった構想を描いているのだろうか。
△8六歩
*11時38分の着手。△8六歩までの消費時間は、▲藤井聡54分、△豊島1時間26分。
*豊島は△8六歩と歩を合わせた。
▲同 歩
*検分が終わると17時30分からセルリアンタワー東急ホテル内のボールルームで前夜祭が開催された。登壇者以外の来場者はアクリルボードで左右を仕切られた円卓に座り、コーヒーなどの飲み物のみで盛会を楽しんだ。取材陣の撮影場所も限られており、徹底した新型コロナウイルス対策が施されていた。
△同 飛
*11時39分の着手。
*▲8七歩には△7六飛と歩を取る狙いのようだ。飛車を使って互いに相手の動きを牽制している。
*控室では松尾歩八段と明日ABEMAに出演する飯島八段が継ぎ盤を挟んでいる。盤上には▲8七歩△7六飛▲6六角が並んだ。先手の狙いは▲9五歩と突いて、▲9四歩△同歩▲9二歩△同香▲9三歩の香取りである。後手が△6四歩と角を目標にしてくれば▲7五飛とぶつける手もあるようだ。
*12時30分、この局面で藤井が50分使って昼食休憩に入った。ここまでの消費時間は▲藤井1時間44分、△豊島1時間26分。昼食の注文は藤井が天重御膳、アイスレモンティー。豊島が鉄火丼、アイスレモンティー。対局は13時30分に再開する。
▲7七金
*対局再開。昼食休憩後の指し手。
*藤井は昼食休憩を挟む56分の考慮で▲7七金と上がった。前述した歩を取らせて指す▲8七歩ではなく、歩を守る▲7七金を選んだ。あくまで歩得を生かす方針のようだ。
*本局で使用されている将棋盤と駒は日本将棋連盟所有のもの。駒は掬水師作の水無瀬書。
△8四飛
*飛車の逃げ場所は8四だった。弱点の桂頭をカバーしている。
▲8六歩
*8六に歩を受けた。いずれ▲8七金と寄って、角をさばいたあとに玉が8筋方面に逃げ出す展開になると懐が広くなっているといった見方ができる。
△3四歩
*14時の着手。△3四歩までの消費時間は、▲藤井聡2時間3分、△豊島1時間35分。
*後手はようやく角筋を開けた。歩損の代償をどこに求めていくのだろうか。
▲4六歩
*藤井は28分の考慮で▲4六歩と突いた。▲4七銀~▲5六銀と右銀を中央に活用する構想かもしれない。駒を中央に繰り出すのは将棋の基本である。長期戦になればなるほど先手の歩得が生きてくる。先手は7七金が後手の桂の利き筋に入っているため、△6五桂からの強襲に気をつける必要がある。
*控室では中村修九段が継ぎ盤で△3五歩を検討している。▲3五同歩は△6五桂が厳しいようだ。以下▲6六金は△8六飛を与えるので先手は▲8七金と寄ることになるが、△5四飛と回られたときに5七の地点を受けるのが難しいとのこと。形は▲5八金だが、△8八角成~△3六角で決まってしまう。先手は飛車取りと△5八角成▲同玉△5七飛成の両狙いが防げない。したがって△3五歩には▲同飛と飛車で取ることになり、△2四飛と回られてどうか。
*
*※局後の感想※
*「▲4六歩としましたが、▲8七金と強く戦うべきだったかもしれません」と藤井。以下△8八角成▲同銀△3三桂▲2七飛と進められた。「手を作るのが難しいかもしれません」と豊島。
△3五歩
*豊島は23分で△3五歩と突いた。▲3五同歩は前述した△6五桂で技が決まりそうだ。▲3五同飛にはやはり△2四飛と回ることになるだろう。△2八飛成を防ぐには▲3九金と寄ることになり、そこで後手にうまい攻めがあるかどうか。
*15時、午後のおやつは藤井がサバランオランジュ、アップルジュース。豊島がタルトフィグ、アップルジュース。
▲同 飛
*藤井は予想通り▲3五同飛と応じた。△2四飛を与えるが、▲3九金と寄っておけばすぐに2筋を破られることはなさそうだ。ただ、そこで△4四角と飛車取りに出る手が検討された。▲4五飛は△3三桂、▲7五飛は△7四歩が軽手で、▲同飛には△7七角成~△7四飛で飛車を素抜くことができる。△4四角に▲2五歩と打てば△3五角▲2四歩△同角で飛車交換になるが、中村修九段は「後手に歩を渡すので飛車交換はしにくいような気も」と漏らす。後手は次に△4六角と歩を取った手が香取りになり、△6五桂と絡めればかなりの迫力となる。
△2四飛
*豊島は24分と時間を掛けて△2四飛と回った。△2八飛成が狙いだ。▲3九金と寄れば前述した△4四角の変化になりそうだ。▲2五歩と打てば飛車交換の変化を避けられるが、できれば2筋に歩を打たないで指したいところだろう。
*
*※局後の感想※
*「△3五歩と突かれて△2四飛と回られて自信が持てない展開になってしまったと思いました」と藤井。本譜は3手前の▲4六歩をとがめられた格好になった。
▲2七歩
*藤井は▲2七歩を選択した。飛車の退路を断つようで部分的には打ちにくい手ではあるが、局面が収まってしまえば先手は2歩得を主張することができる。
*後手はどう指すか。△4四角は▲7八金と角をぶつけられるかもしれない。以下△3五角は▲同歩で、先手陣は飛車の打ち込みに強い格好だ。▲7八金に△8八角成は▲同銀で、△2八角には▲3七角と合わせて△同角成▲同桂で後続手が難しいかもしれない。再度の△2八角は▲3二飛成△同銀▲1八金で角を捕獲することができるからだ。したがって後手は△5四飛と回っておき、△6五桂を見せてから△4四角と上がるのかもしれない。
△5四飛
*豊島は△5四飛と回った。先手に▲2七歩と打たせたといった判断のようだ。2筋を攻めるのに歩を使えなくしたことは大きい。△4四角や△1三角と飛車を追った後に△6五桂が金取りと△5七飛成や△5七桂成を見た厳しい狙いとなる。豊島が席を立つ。
*しばらくして竜王が戻ってきた。紫の美しく鮮明な色合いの袴が異彩を放っている。紫の袴を棋士が身につけるのは非常に珍しい。聖徳太子が定めた冠位十二階の制度では紫が最上の位階を示す色とされたことから、将棋界最高峰の竜王にふさわしい取り合わせである。
*現局面を見た松尾八段は「△5四飛は次に△1三角とする構想でしょうか。後手はあまりゆっくりせずに、飛、角、桂で手を作っていくイメージです。先手は後手の動きをうまく抑えたい。互いに指し手が難しいですね」と解説する。
▲6六金
*16時31分の着手。
*藤井の指し手は▲6六金。悪形だった金を中央に繰り出す力強い一着である。金の威力で飛車を圧迫する構想のようだ。△8四飛には▲7五金を狙っているのかもしれない。▲2二角成を見せながら△8八角成▲同銀と角を交換すれば△8六飛には▲7七角が飛車と香の両取りになる仕組みだ。ただ、2八や8七の空間がキズになる可能性もある。
*中村修九段は挑戦者の金上がりを見て「飛車が歩越しで窮屈な格好ですので、歩得を生かしてじっくりという将棋ではなくなっているようです」と語る。後手がペースを握っているのかもしれない。
*将棋を題材にした『神の悪手』(新潮社)の作家・芦沢央さんが、今シリーズの特別観戦記を執筆するため現地を訪れている。
*豊島が手を止めてから1時間以上が過ぎた。封じ手まで15分を切っている。このまま指さずに封じるのかもしれない。
*18時となり、すぐさま豊島が封じる意思を告げた。立会人の中村修九段から封じ手用の封筒と文房具類を受け取り、別室に移動する。封じ手の一手に使った考慮時間は1時間28分だった。ここまでの消費時間は▲藤井3時間25分、△豊島4時間8分。封じ手を終えた豊島が席に戻ってきた。藤井に封筒と赤ペンを渡す。藤井が封筒に署名して豊島に戻し、それを立会人の中村修九段に渡して初日が終わった。対局は明日の9時に再開する。
*なお、読売新聞オンラインでは封じ手を予想する「封じ手クイズ」を全対局で開催する。応募の締め切りは9日(土)8時。下記リンクをご参照ください。
*
*両立会人と記録係に封じ手予想を聞いた。
*<立会人・中村修九段>
*△3三桂=後手は3一の銀を動かしたいところです。△3三桂と跳ねてから△4二銀~△1三角として、いいタイミングで飛車を取れれば。また、△4二銀~△1三角となれば、△3四歩と打って飛車を移動させて△4六角といった筋も含みになります。
*
*<副立会人・松尾歩八段>
*△8四飛=△8四飛、△1三角、△3三桂を考えていましたが、難しくて悩ましいです。(熟考の末)△8四飛にします。手薄になった8筋を狙う手で、以下▲7七角に△6四歩が考えられますが、自信がないです。話しているうちに△1三角のような気もしてきましたが…。3択だと思いますが、どの手を選んでも見通しが立ちにくく、読みがまとまっていません。
*
*<記録係・広森航汰三段>
*△1三角=角を端にのぞけば△3四歩▲4五飛△3三桂▲7五飛△4六角がわかりやすい狙いとしてあります。△1三角は先手に動いてもらおうという意味の手です。
*
*2日目の朝を迎えた。8時44分、藤井が能の舞台に姿を現した。下座に着くと信玄袋から扇子やハンカチなどを取り出す。お茶を出すスタッフに軽く会釈をする。
*豊島の登場は8時49分。信玄袋から懐中時計を取り出し、駒台の下辺りに置く。時計の文字盤を囲むようにチェーンを巻く。両者は一礼すると駒を初形に配し、1日目の指し手を並べ始めた。
*43手目▲6六金まで並べ終わると、立会人の中村修九段が2通の封じ手を開封する。
△8四飛
*封じ手は△8四飛だった。副立会人の松尾八段が予想した一着である。松尾八段は「▲8五歩△8一飛▲7五金といった順もあるそうですが、私はやはり▲7七角△6四歩と進むのではないかと見ています。じりじりした展開ですね。すぐに激しい戦いになる感じではなく、もう少し駒組みといいますか、駒のポジション争いが続くと思います」と解説する。
*本日2日目は14時から読売新聞オンライン動画で大盤解説会の様子が放送される。
▲5六金
*藤井は46分の考慮で▲5六金と寄った。角筋を通すことで▲2二角成を狙っている。後手は▲2二角成を許すと△同銀は▲3二飛成、△同金は▲3一飛成でいずれも崩壊する。
*対して後手はどう指すか。自然な応手は△8八角成だが、▲同銀で次の手が難しいかもしれない。銀取りに打つ△4四角が考えられるが、▲7七角と合わせる手がぴったりかもしれない。以下△3五角は▲同歩で、▲1一角成が残っている。△3三歩と打てば受かるが、後手は歩切れになってしまう。控室では中村修九段と松尾八段が△3四歩を検討している。飛車のタテの利きを止めることで▲2二角成を防ぐ意味である。
*10時、午前のおやつは藤井がティラミス、アイスコーヒー。豊島がフルーツ盛り合わせ、アイスレモンティー。
*
*※局後の感想※
*▲5六金に代えて▲7七角は、△3四歩▲5五飛△6四歩▲7八銀△6三銀で先手が芳しくないようだ。
△3四歩
*豊島の指し手は△3四歩。検討陣が有力と見た一着である。
*ABEMAで解説中の飯島八段は△3四歩に▲8五歩△3五歩▲8四歩と飛車を取り合う順を検討している。後手が攻めをつなげるには△8五飛だが、▲7八玉と寄られて続くかどうか。以下△8八角成▲同銀△6九角が先手にとって危険な順に見える。▲7九玉は△8八飛成▲同玉△8七銀▲7七玉△7八角成▲6六玉△8九馬で、次の△9九馬が厳しい。しかし、△6九角には▲同玉と強く応じて、△8八飛成に▲7一飛が次の▲4一角を見て厳しいようだ。以下△8九竜は▲5八玉△8八竜▲4七玉で続かない。飛車の取り合いは先手にとって有効のようだ。したがって▲8五歩には後手が別の手を選ぶことになるだろう。
▲2二角成
*藤井は42分の考慮で▲2二角成と角を交換した。代えて▲8五歩は△8八角成▲同銀に△8五桂が厳しかったようだ。以下▲2五飛には△7七桂成が軽手で、▲同銀は△8九飛成、▲同桂は△8八飛成で先手が支えきれない。△7七桂成に先手は▲同玉と応じるが、△8六角▲7八玉に△6八角成▲同玉△8八飛成で後手の攻めが続く格好だ。
△同 銀
*後手は銀で角を取り返す。先手は飛車取りが残っている。
▲8五歩
*10時56分の着手。
*角を交換してから▲8五歩と突く。△8五同飛なら▲同飛△同桂▲7一飛が▲4一角を見て先手が好調だ。したがって後手は飛車を8一や7四に逃げることになるだろう。△8一飛として▲3四飛に△3三銀と銀を活用するのか。ABEMAでは郷田真隆九段と飯島八段が△7四飛▲7五歩に△8六角を検討している。いずれも飛車を巡る局地戦だが、後手のほうが自然な手が多く、先手が苦労している印象だ。
*豊島の残り時間が3時間を切った。
*上村亘五段が控室を訪問している。竜王戦観戦記執筆陣の一人で、本日の朝刊に上村五段による挑戦者決定三番勝負第1局第3譜が掲載された。
△7四飛
*豊島は△7四飛を選んだ。1時間4分の考慮で指された。△8一飛は▲3四飛と歩を取られるのを不満と見たのかもしれない。飛車取りを残したまま戦う。
*先手は飛車を逃げることになりそうだが、▲7五飛とぶつけるのは△8六角の王手飛車で切り返されてしまう。飛車がタダで取られるわけではないが、先手陣は金がうわずっているためスキが多そうだ。
*藤井の残り時間が3時間になった。
▲7五飛
*藤井は▲7五飛と飛車をぶつけた。△8六角が見えているだけに大胆な一着といえよう。
△8六角
*豊島はわずか1分で△8六角と打つ。両者の読み筋が一致しているようだ。
▲7七角
*12時11分の着手。
*藤井は▲7七角と打って応戦する。△7五角には▲同歩で、以下△同飛には▲6六角打が飛車取りと▲2二角成の筋を見たカウンターになる。角を投入したことで先手陣のスキが少なくなっているように感じる。
*藤井が席を外す。一人になった豊島は斜め上を見上げながら人差し指を左右に素早く動かす。脳内の将棋盤で駒を激しく動かしているのかもしれない。
*前述した△7五角▲同歩△同飛に▲6六角打は△7六歩と打つ手があるようだ。以下▲7五角には△7七歩成▲同桂△8九飛で後手の攻めが続く。したがって△7五角▲同歩△同飛に先手は▲6六金と寄って玉頭を手厚くすることになるだろう。以下△7七飛成▲同桂△8九飛に▲7四歩でどうか。控室の継ぎ盤には△9九飛成▲7三歩成△同銀が並ぶ。次の△9七角が厳しく、先手の応手が難しいとのこと。
*12時30分、この局面で豊島が18分使って昼食休憩になった。ここまでの消費時間は▲藤井5時間1分、△豊島5時間55分。昼食の注文は藤井が特選かるめら黒印度カレー、アイスレモンティー。豊島が鰻丼、アイスレモンティー。対局は13時30分に再開する。
*藤井が先に戻ってきた。盤側には記録係の広森三段のほかに中村修九段と作家の芦沢さんが座っている。藤井は早くも前傾姿勢で盤上に視線を落としている。やがて豊島が席に着く。すぐさま前傾姿勢になって盤上を見つめる。
*13時30分、対局が再開した。
*豊島の残り時間が2時間になった。
△7五角
*昼食休憩を挟む23分の考慮で△7五角と飛車を取った。
▲同 歩
*藤井はノータイムで角を取り返す。
△同 飛
*控室の予想通りに進んでいる。以下▲6六金の変化が検討された。
*藤井が羽織を脱いで座布団の後ろにたたんで置く。
▲6六角打
*藤井の指し手は▲6六角打だった。△7四飛には▲7五歩△5四飛に▲2二角成△同金▲同角成の狙いがある。しかし、△7六歩と打って▲7五角と角筋をそらしてから△7七歩成▲同桂△8九飛で後手の攻めが続きそうに見える。飛車を取った先手の7五角が中途半端な位置といえるだろうか。
*ABEMAで解説する飯島八段は「お互いの主張が激突すると、このまま終盤に突入することも」と話している。△8九飛以下、大盤では▲7四歩△9九飛成▲7三歩成△同銀が並ぶ。次の△7四香が厳しいだろうか。△7三同銀に▲6五桂は△6四銀が角取りの先手になる。
△7六歩
*豊島は△7六歩と打った。歩切れになるが、相手の角の働きを弱める効果を期待している。▲8八角と逃げれば△8五飛とし、▲2二角成△同金▲同角成△8九飛成で、次の△8六角が痛打となる。現地の大盤解説会に出演している松尾八段は「後手がうまく切り返しているように見えます」と語った。
▲8八角
*28分の考慮で▲8八角と引いた。▲7五角は前述した△8九飛と打ち込まれる筋でまずいと見たようだ。
△8五飛
*7七の角を動かしたからにはこう指したい。▲2二角成には△同金▲同角成に△8九飛成で後手が有望のようだ。金銀を取られてしまうものの、△8九飛成と桂を取った手に加えて7六の拠点が大きい。
▲7四歩
*先手は△8五飛を与えたが、後手の飛車が7筋から移動したことで▲7四歩が生じた。△6五桂には▲8六歩△同飛▲6五金と桂を取ることができる。
*現地大盤解説会ではこの局面で次の一手が出題された。実に悩ましい局面といえよう。候補手は△8七歩、△8七飛成、△8一飛打などが考えられる。△8七歩は▲9七角に△6五桂と逃げる意味。以下▲8六歩に△7七桂成でどうか。△8七飛成は自然な手で、▲7三歩成△同銀▲7八銀△8一竜▲8七歩△3三桂が一例。第二次駒組みといった感じで長期戦の様相である。△8一飛打は▲2二角成△同金▲同角成に△8九飛成で、やはり先手がつらそうだ。2枚目の飛車の成り込みや△8六角の王手が痛打になりそう。
*15時、2日目午後のおやつは藤井がオレンジジュース、ジンジャーエール。豊島がサバランオランジュ。
△8七歩
*豊島の指し手は△8七歩だった。▲7三歩成は△8八歩成▲6二と△同玉で、▲8八銀には△7七角が強打になりそうだ。以下▲7七同桂は△8八飛成、▲7七同銀は△8九飛成が△7八飛の詰めろになる。したがって△8七歩には▲9七角と角を逃げることになるが、△6五桂でどうか。
*
*※局後の感想※
*△8七歩に代えて豊島は△3三銀を提示した。以下▲7八銀△8六歩▲7九桂が一例で、豊島は「これ以上はいけない」と振り返る。藤井は「本譜かなと思っていました」という。
▲9七角
*やはり角を逃げるのがよさそうだ。
△6五桂
*取られそうな桂を逃げる。▲8六歩は△7七桂成で桂交換になる。
▲5八玉
*玉の早逃げ。▲4八玉~▲3九玉のルートを生かしたい。
△7七歩成
*豊島はすぐに歩を成った。「見通しが立ったのでしょうか」とABEMAで解説する郷田九段はいう。
▲同 桂
*と金を残すわけにはいかない。
△同桂成
*後手は取られそうな桂が交換になった。
▲同 角
*ここで後手にうまい後続手があるかどうか。攻めるなら△8八歩成、力を溜めるなら△3三銀が考えられる。桂交換したことを踏まえて△4四桂と金取りに打つ手も有力のようだ。▲6六金には△8八歩成とし、▲同角左に△8七飛成と竜を作って先手にプレッシャーを掛けておく。玉形の差が響きそうだ。
*豊島の残り時間が1時間を切った。藤井の残りは2時間7分。
△4四桂
*15時50分の着手。
*豊島の指し手は△4四桂だった。桂交換した流れを考えれば自然な一手である。24分の考慮は確認なのか、それとも誤算があったのか。ABEMAの郷田九段は「後手がよさそうだけど道筋が見えにくいような気がします。どのぐらい見通しが立っているのでしょうか。豊島さんの様子を見ていると、そんなにいいとは思っていないような気がします」と話す。
*藤井の残り時間が2時間を切った。
*△4四桂に藤井が手を止めている。▲6六金が自然だが、△8八歩成で攻めが続くかもしれない。以下▲8八同銀は△7八飛▲4七玉△3六桂と歩を補充し、▲同玉に△8七歩が▲同銀に△7七飛成を見て厳しい。△8八歩成に▲同角右は△8七飛成で、△3六桂からゆっくりした攻めが間に合いそうだ。
*16時50分、藤井が手を止めて1時間が過ぎた。検討陣から後手の組み立てが難しそうだといった声が聞かれていたが、やはり先手のほうが苦労しているのかもしれない。
*16時57分、藤井の残り時間が1時間になった。一時は大きな開きがあった両者の残り時間が接近してきた。
*
*
*※局後の感想※
*「△4四桂を打たれて、けっこう痛い気が…」(藤井)。代えて△3三銀と自陣に手を戻すのは▲6五桂が厳しいようだ。7四の歩が大きな拠点となっている。
▲6六金
*1時間19分の考慮で▲6六金が指された。やはり桂で金を取らせるのは損と見ているようだ。
△8八歩成
*豊島はノータイムで△8八歩成とする。△3六桂と歩を補充する筋を頼りに攻めを組み立てているようだ。
▲同 銀
*▲8八同銀、▲同角右、▲同角左と3通りの応手があったが、藤井は▲8八同銀と応じた。
△7八飛
*▲8八同銀にはこの飛車打ちが厳しいようだ。▲4七玉には△3六桂が△8七歩を見ている。
▲4七玉
*先手は玉を4七に逃げる。
△7七飛成
*豊島は△7七飛成と角を取った。控室で検討された手のひとつではあるのだが、どちらかといえば予想外の一着が指された。
*
*※局後の感想※
*△7七飛成に代えて△3六桂が有力と見られていた。▲3六同玉は△8七歩が狙い。以下▲6五桂△8八歩成▲9五角には△同飛で後手よし。△3六桂に▲7六金は△4八桂成▲同金△8八飛上成▲同角左△3六銀が厳しい。△3六桂に▲7三歩成△同銀▲7九歩は、△7七飛成▲同銀△2八桂成でこれも後手がいい。以下▲8八歩には「△8一飛の形が堅いので」と藤井。豊島は「先が長そうなのでよくわからないですけど、本譜よりはよかったですかね」という。形勢を悲観していたのかもしれない。本譜は先手のペースになったようだ。
▲同 銀
*藤井はノータイムで竜を取り返す。
△8九飛成
*△7七飛成と角を取ったのはこの飛車成りに期待したようだ。だが、それまで後手に振れていたAIの評価値は先手側に傾いた。それを伝え聞いた継ぎ盤を挟んでいる松尾八段と上村五段は「どうして数値が動いたのかがわからない」と話している。確かに飛車を成り込む順だけに難しい判断といえる。後手陣はスキのない構えに見えるが、▲7一飛~▲6五桂の2手が入ると▲7二飛成(△同金は▲5三角成から後手玉が詰む)が厳しく、後手が受け止めるのが難しくなるということのようだ。一連の流れを見ると後手が優勢に見られてはいたものの、豊島は手応えを感じていたわけではなかったのかもしれない。
▲7一飛
*藤井は▲7一飛と打ち下ろす。△8二竜で受かればいいのだが、▲2一飛成△3一金▲2二竜△同金に▲6五桂がうるさい攻めになっているようだ。竜を引き揚げさせたことで先手玉が安全になっており、次に▲4五桂や▲7三銀の追撃が厳しそうに見える。▲7一飛に△6九角の王手が気になるが、▲5八桂と受けておいて後続が難しいということのようだ。ただ、後手としては苦しいと見れば△6九角と打って桂を使わせることで先手の攻め筋を緩和するかもしれない。
*
*※局後の感想※
*藤井は「▲7一飛と打って攻め合いの形が作れたかなと思いました」と振り返る。
△9九龍
*豊島は△9九竜と香を補充した。▲8八銀には△8九竜と戻っておくのだろうか。香は攻めや受けに使える駒で、手持ちにしたのはかなりのプラスといえる。
*藤井の残り時間が30分に。豊島の残りは31分。
*藤井は▲5三角成を読んでいるのかもしれない。△5三同金は▲7二飛成、△5三同玉は▲5一飛成でどこまで迫れるか。
▲8八銀
*12分の考慮で▲8八銀と角取りを受けた。
△8九龍
*竜を8九に戻る。次に△6四香が▲6五桂を受けながら金取りになっている。
▲9一飛成
*先手も香を補充する。「先手がよさそうに見えますが、まだまだ難しいです」と郷田九段がABEMAで解説する。続いて登場した飯島八段は△6四香には▲7九香を推奨している。竜の利きを止めながら▲7三歩成を見ている。「最善かどうかわかりませんが」と飯島八段。
*豊島の残り時間も30分に。
△6四香
*「やはり香を打ちましたね」と飯島八段。攻防の一着で先手にプレッシャーを掛ける。
▲7九香
*飯島流の香打ちで対抗する。この手を見た飯島八段は笑みをこぼす。
△6九角
*このタイミングで△6九角の王手が飛んできた。
▲5八桂
*桂を打ってガッチリ守る。
△9六角成
*△9六角成と歩を取る。飯島八段は▲7三歩成を心配している。
▲7三歩成
*藤井はすぐに歩を成った。△7三同銀▲同香成△同金に▲4一銀と進みそうだ。
△同 銀
*銀でと金を取った。
▲同香成
*香で銀をはがす。
△同 金
*▲4一銀と打たずに▲7五金と金を逃げる手もあるようだ。
▲7九歩
*底歩を打って竜の利きを止める。長い戦いになるかもしれない。△7四馬の王手は▲3七玉と寄れる。控室では「混戦になったのでは」といった声が上がっている。「お互いに形勢がいいとは思っていなかったのでしょう」と飯島八段はいう。
*豊島の残り時間が10分になった。秒読みが始まる。
△4二玉
*豊島の指し手は△4二玉。相手の竜から遠ざかって粘り強く指す。▲2一竜には△3一金と引けば竜を捕獲できる。
*藤井の残り時間が10分になり、秒読みが始まった。
*
*※局後の感想※
*△4二玉に代えて△8一歩が検討された。以下▲9二竜△7二歩▲8一竜△9七馬▲4一銀△4二玉▲6一竜△3一金▲5二竜△3三玉▲9七銀△6六香▲同歩△7九竜▲3七桂が盤上に並んだ。「やっぱり玉の安定度に差があるので悪いですかね」と豊島。この後は藤井が攻めと受けを織り交ぜる指し回しで押し切った。
▲7一龍
*▲7一竜と金取りに活用する。△7四馬と王手で引かれるが、▲3七玉と寄っておけば問題はなさそうだ。ここにきて先手の美濃が生きる展開になっているかもしれない。
△7四馬
*王手の先手で金にヒモをつける。
▲3七玉
*玉を寄って王手をかわす。
△3一銀
*銀を3一に引く。△3三玉~△2二玉のルートを確保した。
▲4五歩
*藤井は▲4五歩と桂を取りにいく。玉のコビンが開くため強い一着だ。
△3六桂
*この手で100手に達した。△3六桂までの消費時間は、▲藤井聡7時間50分、△豊島7時間53分。
*取られそうな桂を捨てる。守りの歩がはがれて先手玉が不安定になった。控室では▲3五歩といった声が聞かれる。△3五同歩には▲3四歩と打って後手玉に迫る。
▲3五歩
*藤井の指し手は▲3五歩だった。鋭い踏み込みで再び優位を築いたようだ。
△3三玉
*玉の早逃げで踏ん張る。▲3四歩には△2二玉で頑張りたい。
▲7五金
*ここで当たりになっていた金を活用する。
△8三馬
*馬を8三に引く。金を守りながら馬の利きを保って先手玉にプレッシャーを掛ける。
▲8四歩
*さらに馬を追う。
△7二馬
*竜取りに馬を引いて踏ん張る。
▲3四歩
*王手の先手で歩を取り込む。△2二玉と引くのが自然だが、▲4一竜を防ぐ意味で4二もあるかもしれない。
△同 玉
*豊島は強く△3四同玉と応じた。先手玉と後手玉が接近してきた。
▲4一龍
*後手玉を危険な状況に追い込んでから▲4一竜と迫る。この竜が活躍して先手が勝勢になったようだ。
△3三桂
*桂を跳ねて上部に備える。
▲3六玉
*藤井は強く桂を取った。互いの玉が向かい合う迫力ある進行だ。後手玉は▲3五銀の詰めろになっている。
△3五歩
*歩を打って詰みを回避する。
▲4七玉
*玉を4七に引く。
*豊島は一分将棋になった。
△6七香成
*△6七香成で先手玉に迫る。
▲4六桂
*自陣の桂を王手で活用する。
△2四玉
*△1三玉と引いて踏ん張りたい。
▲1六桂
*桂打ちで追撃する。△1三玉に▲3四銀が攻防で厳しい。
△1三玉
*いよいよ後手玉が狭くなってきた。先手は△4五桂~△5七成香の詰み筋には気をつけたい。
▲3四銀
*△4五桂を防ぎながら▲3三銀不成~▲2五桂を見ている。
△2二玉
*▲3三銀成以下の寄せがありそうだ。
▲3三銀不成
*△3三同玉は▲2五桂△2二玉▲3四桂以下。△3三同金も▲3四桂打以下、いずれも後手玉が寄っている。
△同 金
*▲3四桂打が厳しい王手になる。
▲3四桂打
*この局面で豊島が投了した。終局時刻は19時25分。消費時間は、▲藤井聡7時間56分、△豊島7時間59分。藤井が勝って幸先よいスタートを切った。第2局は10月22・23日(金・土)の両日に京都市右京区「総本山仁和寺」で行われる。
*投了以下、△3四同金は▲同桂で、△3三玉は▲3一竜△3二桂▲4二竜△3四玉▲3三金△4五玉▲5六銀△5四玉▲4三竜まで後手玉は詰み。△1三玉には▲3一竜で後手玉は受けがない。▲3四桂打に△1三玉と逃げるのも▲3一竜で、先手玉に寄りはなく一手一手となる。
まで123手で先手の勝ち

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