第13期マイナビ女子オープン本戦。伊藤沙恵vs里見香奈

開始日時:2019/10/16 10:00
終了日時:2019/10/16 17:03
表題:第13期マイナビ女子オープン本戦
棋戦:マイナビ女子オープン
戦型:相振り飛車
持ち時間:各3時間
消費時間:133▲180△180
場所:関西将棋会館
備考:昼休前48手目▲82分△36分\n
先手:伊藤沙恵女流三段
後手:里見香奈女流六冠

*西山朋佳女王への挑戦を目指す第13期マイナビ女子オープン(主催:株式会社マイナビ)。
*対局開始は2019年10月16日(水)10時。対局場は関西将棋会館。
*持ち時間は各3時間(チェスクロック形式)、持ち時間を使いきると1手60秒未満の秒読みになる。
*先後は振り駒で決定する。
▲7六歩
*振り駒の結果、と金が3枚出て伊藤が先手になった。
△3四歩
*マイナビ女子オープンは、株式会社マイナビが主催する女流タイトル戦。1987年から20年間行われたレディースオープントーナメントが前身で、2007年に創設された。
*優勝の賞金は500万円、準優勝は150万円。本戦の勝ち星料が公開されている。
*アマチュア選手が参加しているのが特徴の一つ。第1期から第3期までは主催者推薦だったが、第4期からはプロアマ混合予選「チャレンジマッチ」を実施している。
▲6六歩
*◆伊藤 沙恵(いとう さえ)女流三段◆
*1993年10月6日生まれ、東京都武蔵野市出身。屋敷伸之九段門下。2014年、女流初段。2019年、女流三段。女流棋士番号は52。
*タイトル戦登場は6回。
△3二飛
*◆里見 香奈(さとみ かな)女流六冠(清麗・女流王座・女流名人・女流王位・女流王将・倉敷藤花)◆
*1992年3月2日生まれ、島根県出雲市出身。森けい二九段門下。2004年、女流2級。2011年、女流五段。女流棋士番号は33。
*タイトル戦登場は44回。獲得は清麗1期、女王1期、女流王座4期、女流名人10期(クイーン名人)、女流王位5期(クイーン王位)、女流王将7期(クイーン王将)、倉敷藤花9期(クイーン倉敷藤花)の計37期。
▲7八銀
*伊藤の通算成績は119勝46敗(勝率0.721)。
*今年度成績は22勝4敗。
*今年度の対局数、勝ち数、勝率(0.846)、連勝(6月4日~7月31日の9連勝)はいずれも女流棋士トップの数字を残している。
△6二玉
*里見の通算成績は260勝87敗(勝率0.749)。
*今年度成績は11勝6敗。他に公式戦(いわゆる「男性棋戦」)で9勝10敗の成績を残している。
▲7七角
*過去の対戦成績は里見15勝(内1勝は伊藤が奨励会員だったときのもの)、伊藤4勝。現在は里見が2連勝中。直近は5月に行われた第1期ヒューリック杯清麗戦予選。6勝通過2敗失格の予選7回戦で5勝1敗同士で対戦している。
△4二銀
*里見は第6期の女王で、前期(第12期)の挑戦者。西山女王との五番勝負は1勝3敗で敗れ、女流五冠復帰を逃した。その後、女流王位を渡部愛女流王位(当時)から奪取して女流五冠に復帰すると、甲斐智美女流五段との五番勝負を制して初代清麗位を獲得して史上初の女流六冠を達成している。
*今後タイトルを全て防衛し、このマイナビ女子オープンで勝ち進んでタイトルを奪取すると、女流七冠・全冠制覇を達成することになる。
*今期は本戦からのシードで、本局が初戦になる。
▲6七銀
*伊藤は今期、予選から出場。予選では和田はなアマ、矢内理絵子女流五段を破った。
*第7期から今期まで、7期連続で本戦に進出している。
△3五歩
*本日の関西将棋会館で行われている公式対局は、本局のみ。4階の和室では、奨励会三段リーグ(日程変更分)が行われている。
▲8八飛
*4手目に△3二飛とした里見に続き、伊藤も飛車を振る。
△3六歩
*開始5分、里見が飛車先の歩の交換を目指す。
▲同 歩 △同 飛 ▲5八金左
*伊藤は第27期大山名人杯倉敷藤花戦で挑戦者に決まっている。現在の倉敷藤花保持者は里見。タイトル挑戦7回目での初戴冠を狙う伊藤にとって、里見は越えなければならない壁だ。7回目の挑戦で獲得に至った棋士と言えば、先月誕生した木村一基王位がいる。伊藤は続くことができるか。
*現役女流棋士で、タイトル挑戦4回以上で獲得に至っていないのは伊藤だけ。倉敷藤花戦三番勝負は11月10日に開幕する。本局は、その前哨戦でもある。
△3三銀 ▲8六歩
*▲3七歩とは打たずに攻撃態勢を作っていく。
△7二銀 ▲8五歩 △7一玉
*△7一玉は自然ながら、大事な手。△7一玉を怠ると▲8四歩△同歩▲8二歩で、いきなり桂損してしまう。
▲2八銀
*後手の里見は美濃囲い。先手の伊藤は金無双や矢倉囲いが予想される。
△4四銀 ▲8四歩
*伊藤も飛車先の歩を交換しにいく。
△同 歩 ▲同 飛 △8三歩 ▲8六飛 △3四飛 ▲3七歩
*△3四飛と引いたことで、△3六歩と垂らされる筋が生じている。伊藤は歩を打って受けた。
△1四歩 ▲1六歩 △5二金左
*7分考えて、美濃囲いの金を締まった。
▲4八玉
*今朝の大阪市内は晴れ。先週までは汗ばむ日もあったが、今日は肌寒さを覚えるほどだ。今日の最高気温は23度が予想されている。
△6四歩 ▲3八玉 △6三金
*今度は伊藤が考えている。自然なのは金無双を完成させる▲4八金上。飛車の横利きを通しながら後手の駒組みに制約を与える▲7五歩も考えられる。
*伊藤の考慮中に里見は席を外した。戻ってくるとスーツの上着を脱ぎ、脇息の端に掛けた。
▲4八金上
*20分考えて、金を上がった。
△8二玉 ▲9六歩
*11時4分の着手。▲9六歩までの消費時間は、▲伊藤44分、△里見19分。
*2手前の20分の考慮に続き、▲9六歩も10分以上考えた。
△5四歩 ▲9五歩 △5五歩
*5筋の位を取った。角の利きを二重に止めることになるが、△4五銀と出たときに▲6五歩の反発がない。▲5六銀の進出も防いでいる。
▲6八角 △4五銀 ▲7七桂 △1三角 ▲7五歩
*11時52分の着手。
*飛車の横利きを通しつつ、△7四歩から後手陣が広くなる形を避けた。
*この局面で正午になり、昼食休憩に入った。ここまでの消費時間は、▲伊藤1時間22分、△里見36分(持ち時間各3時間、チェスクロック使用)。昼食の注文は里見がにゅうめん(やまがそば)、伊藤は無し。対局は12時40分から再開される。
△3三桂
*12時40分に対局再開。里見はさらに8分ほど考えて、桂馬を跳ねた。
*伊藤は12時20分頃には既に対局室に戻り、盤の前に座っていた。
*里見は再開直前に入室している。
▲1五歩
*なんと、1筋から。
*棋士室に控えていた面々も「わっ」と声を上げる。
*▲1五歩の狙いは、△同歩と取らせることで後にいつでも▲1五香で歩を補充できることにあるようだ。つまり、伊藤は「これから思い切り攻めますよ」と宣言している。
△同 歩
*▲8五桂と跳ねるのは、△8四歩と催促して後手が指せそうだ。以下、▲9三桂成は△同玉▲9四歩に△8三玉で受け止められる。攻めるなら▲9四歩△同歩▲9三歩の筋になりそうだ。
▲9四歩
*さあ、伊藤が攻める。
△同 歩 ▲9三歩
*里見の手が止まる。静かに扇子を広げ、風を送る。
*15分以上考え、里見の消費時間も1時間を超えた。△9三同香、△9三同桂、そして△9三同玉も考えられる局面だ。
△同 桂
*里見は桂馬で取った。
*1歩あれば▲9二歩△同香▲9四香が手筋だが、現在は持ち歩がない。▲1五香と取れば歩は手に入るものの、切り札として取っておきたい。
*
*※局後の感想※
*感想戦の以降の検討で後手が指せる順がなかなか見つからず、△9三同桂の局面までさかのぼった。
*△9三同桂に代えて△5六歩は考えられた。以下、▲9四香△5七歩成▲同角△同角成▲同金右(▲同金直は△5九角)に(1)△3六歩は▲9六飛△5六歩▲9二歩成△7一玉▲4六金で先手が指せるようだ。(2)△5六歩▲同銀△同銀▲同金△7八角の変化は「自信がない」と伊藤は話した。
▲9四香
*伊藤は単に香車を走った。
△9二歩
*棋士室では、(1)▲1五香△1四歩▲9三香成△同歩に▲2六桂が指摘されている。ただ、△5四飛▲1四香△2四角▲1一香成と進んだ局面は、成香が遊び駒になるので先手が得したとは言いきれない。
*(2)▲7四歩と突き、△同歩と取らせることでのちに▲7三歩とたたくスペースを作る手も自然だ。
▲9三香成 △同 歩 ▲7六桂
*6四と8四をにらむ地点に桂馬を打った。次は▲6五歩。△同歩なら▲6四歩と打てる。
*里見はどう方針を立てるか。▲1五歩(49手目)で歩をもらっているので、攻めるなら△3六歩▲同歩に△2五桂と跳ねる筋はある。棋士室を訪れている奨励会員は「先手の形が、駒をもらって反撃するつもりに見えるので、後手は受けに回りたいところです」と話す。
*先手の攻め駒を攻めるなら△7四歩だが、自玉の近くで戦うことになる。
△5六歩
*里見は攻めを選択。
*「先手に2歩渡すと▲9二歩△同香▲8四歩が生じるので、△5六歩は思いきった手ですよ」と畠山鎮八段。
*▲5六同歩に△3六歩▲同歩△3七歩▲同銀△2五桂が予想される。
*
*※局後の感想※
*代えて△3一角は▲8四歩△6五歩▲同歩△8四歩▲同飛△8三歩▲3四飛△同銀▲6四歩で先手が指せる。
▲8四歩
*▲8四歩と指し、伊藤の残り時間は1時間になった。里見は1時間43分残している。
*△8四同歩なら▲6五歩が有力。
△5七歩成
*14時8分の着手。△5七歩成までの消費時間は、▲伊藤2時間0分、△里見1時間27分(持ち時間各3時間、チェスクロック使用)。
*
*※局後の感想※
*代えて△8四同歩は▲同桂に(1)△8三銀は▲9二歩、(2)△8三歩▲7二銀成△同金は▲7四歩で先手が指せる。
▲同 角 △同角成 ▲同金右
*▲5七同金直は△5九角があったので、右で取る。ただ、右の金で取ると、△5六歩に金を戻ることはできない。
△3六歩
*▲3六同歩なら、△5六歩▲同銀△同銀▲同金に△3六飛。先手は終始、十字飛車の筋に注意しなくてはならない。
▲8三歩成 △同 銀 ▲8四歩
*(1)△9四銀は積極的な受けだが、▲8三角△7二角▲9四角成△同歩▲8三銀で攻めが続く。
*(2)△7二銀が有力。それでも▲8三角なら放置して△3七歩成と攻めることができる。あとで▲7二角成とされても、△同玉▲8三歩成△6二玉と玉を逃がすことができる。
△7二銀
*後手からは△3七歩成▲同桂に△3六歩が厳しい。▲4五桂と銀を取られても△同桂が幸便だ。
*伊藤は忙しいが、銀を手に入れて8三に打ち込む展開にしたい。
▲4一角
*▲2三角成と、▲8三歩成△同銀▲6三角成を見せ、後手にプレッシャーをかけた。着手した伊藤は席を外し、3分ほどして戻ってきた。すぐに脇息を引き寄せて座る。
*▲8三歩成△同銀▲6三角成の筋を受けるだけなら△5二歩だが、△5六歩と打てなくなる。△6二金上は形が悪い。応手に迷う手だ。午前中は後手の作戦勝ちと思われていたが、昼食休憩以降は伊藤がうまく手を作り、混戦になっている。
*棋士室には北浜健介八段の姿。奨励会幹事で、今日行われている三段リーグ(日程変更分)を見届けるために関西将棋会館に詰めている。
*「現局面は先手持ちと言ってもおかしくないのではないでしょうか。▲8三歩成の筋を何かで受けても、▲2三角成が厳しいですね。後手は飛車を取られると攻めが難しくなりますので」と北浜八段。▲4一角は攻めだけでなく、▲2三角成から攻め駒を一掃する狙いを秘めている。
△5二香
*20分以上考えて△5二香と受けた。5七の金取りでもあるが、6三への角の利きを止めた受けの手だ。
▲5三歩
*残り時間が30分ほどの伊藤は、すぐに歩を打つ。
*(1)△5三同香なら▲8三歩成が厳しい。
*(2)△5三同金なら▲2三角成がある。
△同 金
*「5二に打ったのが歩ではなく香ということは、▲5三歩を誘って△3七歩成から攻め合いに持ち込むつもりではないか」と言われていたが、里見は金で歩を取る辛抱を選んだ。里見も棋士室の検討陣同様に、先手が指せると見ているのだろう。
*指した里見はひざ掛け代わりに使っていた上着を座布団の上に置き、席を外した。2分ほどして戻った里見は、持参している水筒のお茶をコップに注いだ。
▲4六歩
*辛抱する里見に「攻めてこい」と言う、強気の一手。△3七歩成を誘う。以下(1)▲同銀は△2五桂▲4五歩△3七桂成▲同桂に△3六歩があり、選びづらい。(2)▲同桂(A)△3六銀▲2三角成△3五飛に▲5六馬と進めば、▲8三歩成の先手になる。
*(2)▲3七同桂に(B)△5六歩は入るだろうか。▲同銀なら、上記の手順の▲5六馬が指せなくなる。
*
*※局後の感想※
*▲2三角成も有力だった。香の利きを通す△6三金には▲5六歩と受けておく。伊藤は「こちらのほうがよかったです」と振り返った。ただ、本譜も先手が指せる。
△3七歩成 ▲同 桂
*▲3七同銀は△2五桂が厳しかった。本譜の▲3七同桂であれば、△2五桂と跳ねられても▲4五歩△3七桂成▲同銀△3六歩に▲4八銀と引くことができる。
*銀取りが残っている里見が忙しい展開になっている。(1)△5六歩は▲4七金寄。(2)△3六銀▲2三角成△5六歩は▲3四馬。いずれも、攻めきるのは大変だ。
*手番の里見は微動だにせず、盤を見つめている。伊藤のほうが前後に大きく揺れながら読みふけっている様子だ。
*北浜八段は手順を確認して「強気の受けですね。受けに自信がある伊藤さんらしい手順です」と感嘆した。後手は△9五角から飛車をいじめながら上部を開拓する順を目指したいと話す。一例を挙げると(1)△5六歩▲同銀△同銀▲同金△9五角▲8七飛に△9六銀だ。以下、▲8九飛は△7七角成と桂馬を取れる。
*15時50分、里見の残り時間が30分を切った。
△1六歩
*全く候補にない手が指された。検討陣は「ほう……」「そんな手が……」と言葉を失っている。
*(1)▲4五歩と銀を取ると△1七歩成(A)▲同香△同香成▲同銀に△4五桂。2八銀を先手玉から遠ざけて、薄くなった玉頭を攻めようとしているのだろう。
*手順中、△1七歩成は王手ではないので(B)▲8三銀も考えられるところだ。
*(2)▲2三角成もあるだろうか。飛車を取ってしまえば、上記の攻めは緩和される。
*「これはひねり出しましたね」と北浜八段。迫力のある勝負手だ。
▲4五歩
*伊藤は銀を取った。12分弱考えて、残り時間は9分ほど。
△1七歩成
*伊藤は何を指す。
▲2三角成
*今度は伊藤に、予想されていない手が出た。飛車を取る手を間に合わせて、余しにいく。
△2八と ▲同 玉
*手筋は「玉は下段に落とせ」の△3九銀だが、(1)▲同玉△3七飛成に▲3八銀で受かっているという読みだろう。飛車成りを嫌って(2)▲3八玉と寄るのは△2九角と打たれて余計に危ない。
△1七香成
*「行った!」と北浜八段がうなる。北浜八段自身が候補に挙げた手だが、(1)▲1七同香△1九角▲同玉△3七飛成に(A)▲2八銀で受かっていそうだ、と話していた。
*上記の(A)▲2八銀には△1八歩▲同玉△3八竜が△2六桂以下の詰めろで、受けがないようだ。ただ、(B)▲8三歩成△同銀▲2八銀なら、△1八歩▲同玉△3八竜に▲8三飛成△同玉▲5六角の王手竜取りがある。
*(2)▲3八玉なら△2七成香▲同玉△4九角▲3八銀に△3六銀で先手玉は寄っている。現時点では(1)▲1七同香がまさると見られている。
*
*※局後の感想※
*△3九銀も有力な攻め筋だが、▲同玉△3七飛成▲3八銀△2八角▲4九玉△3五竜に▲3六歩のときに、竜の逃げ場が難しい。△3九銀でも先手が余している。
*感想戦はこの局面まで。1時間ほどで終了した。
▲同 香
*16時23分、この手で持ち時間を使いきった。以降、伊藤は一分将棋になる。
△1九角
*棋士室の見解は、先手持ち。
▲同 玉 △3七飛成 ▲8三歩成 △同 銀
*△7一玉は▲8二銀△6二玉▲7二と以下、王手が続く。
▲2八銀 △8五歩
*里見は飛車取りに歩を打つ。
▲同 桂
*▲3七銀や▲8五同飛もあったが、伊藤は桂馬で取った。
*△1八歩▲同玉△3八竜は、▲7三桂成△同玉▲8三飛成△同玉に▲5六角の王手竜取りがある。
△3八龍
*△1八歩は打たずに、単に竜を入った。局面は先手が勝っていると見られている。
▲7三桂成 △同 玉 ▲8三飛成
*△8三同玉に▲7四銀から詰む可能性もある。
△同 玉
*里見はすぐに取る。
▲7四角
*伊藤は王手竜取りをかける。
△7二玉
*この手で100手に達した。△7二玉までの消費時間は、▲伊藤3時間0分(一分将棋)、△里見香2時間44分(持ち時間各3時間)。
▲3八角
*後手の攻め駒が盤上からなくなった。
△8九飛 ▲5九歩 △3七歩
*里見は勝負手を連発していく。
▲7四角 △7三銀 ▲8四歩
*△7四銀には▲同歩でいい。
△8二歩 ▲3三馬
*5一への逃げ道をふさぐ。先手玉への有効な攻めがないと見ている。
△7四銀
*▲7四同歩に△3八歩成は、▲7三飛から詰む。
▲同 歩 △7三歩
*「敵の打ちたいところへ打て」の一手で、詰めろを受ける。
▲3一飛
*▲8一銀を見せる。
△3八歩成
*まだ詰めろになっていない。
▲5五馬
*▲8一銀から詰む可能性があったが、力をためた。
△1八歩
*▲1八同玉△2九角▲1九玉まで決めてから、△5一桂と粘ると見られている。先手玉は、前に利く駒が入れば詰む形になる。
▲同 玉 △2九角
*アヤはあるか。
▲1九玉
*△1八歩は打ち歩詰めの反則で指せず、先手玉に詰みはない。後手玉は▲7三歩成以下の詰めろなので、里見は受けに回る必要がある。
△2八と
*すぐに指していた里見は、ここは4分考えて銀を取った。▲2八同玉に△7四角成がある。
▲同 玉 △7四角成 ▲8一銀 △6二玉 ▲7二銀打
*△7二同金は、▲同銀成△同玉▲7一金以下、詰みがある。
△5一金
*ぎりぎりの受けだ。
▲7一銀不成
*しかし、里見は苦しい。△7一同玉は▲5一飛成なので、△6三玉と逃げるしかない。
△6三玉 ▲5一飛成
*里見の女流七冠制覇は、持ち越しになりそうだ。
△7五馬 ▲6五金
*歩頭にガツンと打って、玉を上に逃がさないようにする。
△同 歩 ▲同 馬
*△6五同馬とは取れない。▲6二竜△7四玉▲6五竜で詰んでしまう。
*3八や2九に玉を呼び込んでから△6五馬と王手で取りたいが、いま△3八金と打つのは▲同馬があって無効だ。
*里見は一分将棋になるまで考え、次の手を指さずに投了した。終局時刻は17時3分。消費時間は、両者3時間0分(一分将棋)。
*勝った伊藤は、2回戦で甲斐智美女流五段-小野ゆかりアマ戦の勝者と対戦する。
*里見は本棋戦を勝ち進めば女流タイトル全七冠制覇を達成する可能性があったが、持ち越しとなった。
まで133手で先手の勝ち

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